リーダー不在


ビジネスの世界で名を上げたドナルド・トランプ氏が第45代アメリカ大統領に就任し、ビジネス的手腕が政治の世界でどこまで有効なのか注目が集まる。ビジネスライクというと実務的で効率を追求する感じがあるが、自分の利益さえ得られればいいというネガティブな印象もある。20日の就任演説では「America First」を前面に押し出し、「Buy American and hire American」という2つのシンプルなルールに従うとした。すべての国がそれぞれの利益を第一に考えながらお互いの親善を深めていくべき、とも言っている。企業のビジネスにおいては自社の利益を第一に考えて行動するのは当然のことだ。それが前提でお互いにとってメリットがある場合は他社とも提携する。そう考えるとトランプ氏の考え方はビジネスライクなだけで一部で指摘のあるナショナリズム的な考え方とはまた違うような気もする。

ただ気になるのはトランプ新大統領の主張する政策は短期的な利益のみを追いかけているように見えることだ。他国と長期的な関係を築いていくというよりは揺さぶりをかけて今の利益が最も大きくなるような交渉をする。「Buy American and hire American」も長期的に米国の利益になるのかは疑問だ。米国の企業の高コスト体制、生産性の低下が進み、結果として米国民が時代遅れのものを高い価格で買わざるを得ないような状況になり得る。

一方で日本も含め他の国は米国を頼り過ぎていた部分もある。今までの米国もお人好しだからというわけではなく自国の利益に適うから軍事面でも経済面でも他の国に協力してきたはずだ。日本との防衛協力についてもお互いにメリットがあるから結んできたわけで一方的に負担を増やせと言われても納得はできない。それでも高い理想を掲げ他国と連携し世界をよくしようとしてきたオバマ大統領が去り「America First」を掲げるトランプ氏が大統領になることによって大きな喪失感を感じるのは偉大な米国が失われる思いがあるからだ。自他ともに認めてきたリーダー役を米国が自ら降りるのが残念に感じるのは今まで米国に頼ってきた証拠だろう。これからの日本は米国が守ってくれることを前提とせず中国、ロシアを含め、他の国との関係を深めながら、今まで以上に自立していく必要がある。米国との関係が変わるのは寂しくもあるがこれからは今まで以上に対等な立場を意識して協力していかなければいけない。