内と外のバランス


前日にヒラリー・クリントン氏優位の報道(NY Timesは前日に84%の確率でクリントン氏が勝利との報道)があっての結果だから尚更ドナルド・トランプ氏の勝利は衝撃だった。日本時間水曜日の午前中の時点ですでに激戦区の多くでトランプ氏有利の数字が出ていたにも関わらず、日米のメディアともに慎重な姿勢をなかなか崩さなかった。先に反応したのは株価で、日経平均は前場のうちに300円以上下げ、午後にはさらに下げが加速して途中1000円以上下げる場面もあった。事前の報道機関の予想を大きく裏切る結果に当日株価が大きく下がったのは英国のEU離脱のときと似通っているが、そのときと大きく異なるのは回復が早いことだ。ニューヨークの株式市場は取引前の先物こそ大幅に下げたが、翌日取引が始まってからは大きく下げることもなくむしろ大幅な上昇を記録し、その後もダウ平均は連日最高値を更新した。日経平均も木曜日には前日の大幅な下落分を取り戻し、さらに上乗せがあった。勝利確定後のスピーチでクリントン氏を称賛したり、選挙日の翌々日にオバマ大統領と友好的な会談を行ったりすることで、世界が少し安心したのかもしれない。

ただトランプ氏のこれまでの発言を考えると楽観的になるのはまだ早いし、株価が今後下げに転じる可能性も低くない。イスラム教徒に対する差別的な発言等は選挙に勝つための方策で大統領になったら控えるのではないかと期待しているが保護主義的な政策は本気で実現しようとしている雰囲気がある。米国の内向き志向が強まり短期的な自国の利益を優先し過ぎるようになるのは心配だ。そうなれば経済的にも安全保障的にも米国に頼る部分が多大だった日本への影響は特に大きい。英国のEU離脱もそうだが、保護主義的な動きが他の国にも広がれば、世界の経済は非効率になり安全保障の面でも今より不安定になる。

人と人との関係、企業と企業の関係でも同じだが皆が自分の利益ばかり考えて行動すると全体の利益が少なくなり、長期的には自分も損する結果になりかねない。現時点で損をしていたとしても長期的な視点で自国の利益になるのであれば多少譲る部分があってもいい。

一方で英国民や米国民の選択を浅はかだと決めつけるのも違う。現状に対する不満を持つ層が厚いということだ。トランプ氏はこの層の支持を受けて勝利したわけで簡単に裏切るわけにはいかないだろうが、選挙に勝つための威勢のいい無鉄砲な約束をそのまま守るわけにもいかず、舵取りは相当難しい。日本でも格差が広がる中で現状に不満を持つ層は確実に厚くなっており、他人事ではない。ビジネスの世界で成功を収めたトランプ氏の手腕に期待して米国の動向を見守りつつ、内と外のバランスをとる解決策を考えていきたい。


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