人はパンのみにて生きるものにあらず

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昨年池袋に「いきなりステーキ」が出来てから、「肉マイレージ」を貯めている。週に3回ラーメン二郎に通った学生時代に比べると随分ハイカロリー・ハイファットな食事を控えるようにはなっているが、月に1度くらいは体のことを気にせず、おなか一杯お肉が食べたくなる。

最近の飯屋は楽しい。立ち飲み・立ち食い形式で本格料理や酒が味わえる店、もはやジャンルが分からないラーメン屋の数々等、個人のニーズの隙間を埋めるような飯屋が山のようにできた。特にBook offの創業者が始めた「俺の株式会社」が運営するレストランは、2012年11月創業から2年余りで30店舗を数えるまでになり、破竹の快進撃が伝えられる。「俺のイタリアン」に始まった「俺の…」シリーズは、「俺のフレンチ」「俺の焼き鳥」「俺の焼き肉」など、早10業態を数える。ネーミングセンスの面から言えば、個人的には「俺の揚子江」が好きである。

「俺の…」は、立ち食いスタイルではあるものの高級店の3分の1の値段で本格的な料理が楽しめる点が人気のカギである。が、急成長を支えているのはきっとそれだけではない。俺の株式会社のホームページを覗くと、経営陣の様々な言葉から、彼らが従業員のモチベーションを大切にしていることが分かる。特に、料理の質を決める料理人に対する最大限の敬意を感じとれる。長年にわたる不景気で腕を振るう場所が減ってしまった腕利きのシェフたちが、スタイルこそ違えども、誇りと気概を持ってプロフェッショナリズムを発揮できる場所を提供する―。この理念があるからこそ、質を落とすことなく店舗の急拡大が可能となっているのだろう。マズローが五段階欲求説で看破している「人間の自己実現欲求」を愚直に追求していることが、このビジネスモデルがうまくいっている重要な要素に思える。

牛丼チェーン店の「ワンオペ」にまつわる事件をはじめとして、その労働環境の厳しさから“ブラック”の印象がついてしまった外食産業だが、このように創業時から従業員に光を当てている企業もあるし、効率を追求し続けた既存プレーヤーにも変化の兆しはある。バイトも含めて、経営理念を共有する研修を始めた会社もあると聞く。

人はパンのみにて生きるものにあらず―。
労働市場は売り手市場に転換しつつある。当たり前のことだが、労働の対価として高い報酬を与えるだけでなく、誰かの役に立っているという確かな喜びを得られる、働くことで自分の成長を実感できる―。そんな会社が、そのような状況でも優秀な人を集め続ける。

「すべての人が、思う存分、活躍できる楽しい社会を実現する」。この理念を実現するためにも、関わってくれる人が喜びに満ちあふれている、洋々もそんな会社を目指したい。


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人の成長を支援する「洋々」GM。経営コンサルティング会社A. T. Kearneyにて、Managerとして金融機関を中心に数多くのコンサルティングを手掛ける。また、採用担当者として多くの面接を行うと共に、コンサルタント向け研修プログラムの作成、実施にも深く関わる。金融専門誌への執筆多数。慶應義塾大学経済学部卒。ミシガン大学ビジネススクール・MBA Essential program修了。