伝え方


情報の伝達は人間だけでなく言語をもたない動物同士の間でも行われている。アリのような小さな虫でも餌を発見したことや外敵が巣へ侵入してきたことを化学物質の分泌によって仲間に伝えることができる。多くの動物は音を使って仲間とコミュニケーションを取る。人類も言語を獲得するまでは他の動物と大差なかっただろう。しかし、ただの叫び声とは異なる言語を獲得するとともに伝えることのできる情報量が飛躍的に増えた。初めは話し言葉だけだったがそのうち文字を生みだし視覚を通して伝えることができるようになった。さらにそのずっと後には活版印刷技術を発明し書物として情報を普及させることが可能になった。人類の長い歴史の中ではごくごく最近のことだが、20世紀には電波を使って、音声や映像をブロードキャストすることができるようになり、最近では世界にはりめぐらされたネットワークによって場所に囚われずに瞬時に文字も音声も映像も好きな相手に送ることができるようになった。

確かに情報そのものの伝搬については、物理的な距離においても時間当たりに伝えられる量においても、飛躍的に進歩した。しかし、人が伝えたいことを情報に落とし(エンコード)、またそれを理解できるようにする(デコード)部分についてはあまり進歩していない。進んだのは運ぶところだけで、運ぶ中身については大して変わっていないのだ。ある人が本一冊分の内容を他の人に伝えたいときにその文字情報自体は一瞬で世界中に届けることができるが、それを受け取った人が内容を理解するには数時間かかってしまう。それが人間の脳の限界なのだろうか。

文字の創造以来、人が情報をエンコード、デコードする効率が全く上がっていないかというとそういうわけでもない。本一つとってもコンピュータの進歩に比べると非常にゆっくりではあるが確実に読みやすくなっている。文法や漢字の使い方が統一されて書いた人の意図がより伝わりやすくなった。今から考えると句読点のない文章は読みにくくて仕方ないが、日本語で句読点を使いだしたのはそれほど昔のことではない。スペースの使い方だったり、文字のフォントだったり、視覚的な効果も少しずつではあるが確実に進歩している。本だけでなく、たとえば、20世紀にテレビ放送が始まって以来、映像においても伝えるためのノウハウがたまっているはずだ。

まだまだ発展途上で、今ある形がベストなわけではない。逆にいえば伝え方を工夫することによって人間の脳が情報を理解するスピードを今より飛躍的に高めることができるかもしれない。消費者用のデジタル製品の高機能化で、言語以外の画像、映像、音、などの情報も扱いやすくなった。そういったものも使いながら本一冊分の情報をより短い時間で効果的に吸収する方法を探っていけるといい。


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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。