行方不明のロバ


曽野綾子氏の「アラブの格言」という本に「神が貧しい人を幸福にしようと思ったなら、彼のロバを行方不明にして、それからまた見つけ出すようにしてやればいいのだ」というトルコの格言が紹介されている。病気やけがをして、それが治ったときは、自分が健康であることを以前より強くありがたく感じるものだし、サラリーマンの年末調整で所得税が戻ってくる際の喜びも同じ感覚だと思う。もともと払わなくてもいいものを払っていてそれが戻ってくるだけなのだが何だか得した気分になる。一方で確定申告の際に税金を納めなければいけない場合は、本来払うべきものでも、何だか損した気がしてしまう。

税金に限らず、自分が今、幸せと感じるかどうかは多くの場合、相対的な感覚によるものだと思う。どんなに物質的に恵まれた豊かな暮らしをしていてもそれが当たり前の状態であれば、そのこと自体に対してそれほど幸せを感じないだろう。しかし、仮にその恵まれた豊かな暮らしを奪われるようなことがあればその失望感は大きく不幸に感じるはずだ。逆に物質的にあまり恵まれていない場合でもそれよりさらに悪い状態からそこまで立ち直ったのだとすれば自分の境遇を幸せに感じるかもしれない。

幸せが相対的なものだと考えると現在の自分の状況に関わらずその状況に今自分が置かれていることをありがたく思う感謝の気持ち次第で自分の幸せ度が決まるのかもしれない。多くの宗教で様々なことに感謝することを教えているが謙虚に感謝する気持ちが自分自身の幸せにつながることが多いのだろう。自分の大事なロバが盗まれたことを想像し、実際にはロバが盗まれていなくて自分の手元にまだいることを感謝する。健康な人は自分が病気になったことを、病気の人は今よりもっとひどい病気になったことを想像しつつ、今の状態がそれほど悪くないことを感謝する。「生きているだけでまるもうけ」なのだ。

一方で今の境遇に満足し、感謝するだけではあまり進歩がないとも思う。少しずつでも自分の状態を改善することができれば以前の自分の状態と比較してよくなったことをさらに幸せに思えるだろう。幸せが相対的なものだとしたら、一生幸せでいるためには、自分の状態を少しずつでもいいから常に改善し続けていけばよい。現状に感謝しつつ、生きている限りさらなる改善を一歩一歩達成し続けることができれば一生楽しくて幸せな日々を送ることができるのかもしれない。


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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。