好きなもの


好きな作家の新作が出てくるのは待ち遠しい。他の作家ではいけない、その作家でないといけないのだ。村上春樹氏のファンはずっとその新しい小説を待っていて、数年に1回発売されると瞬く間にベストセラーになる。新作でなくても、たとえば今年初めに亡くなったJ.D. サリンジャー氏の未発表作が発売されることがあれば、ファンにとってはたまらない。Holden CaulfieldやGlass家の世界に惹きつけられた人は、その世界の感覚をもう一度新鮮な気持ちで味わいたいと思うのである。

音楽でも同じ。自分の好きなアーティストの新しいアルバムを心待ちにしている人は多い。一度解散したバンドの再結成が盛り上がるのはそのバンドが作り出す世界にもう一度浸りたいから。モーツァルトの交響曲第四十二番やベートーベンの交響曲第十番を渇望している人も多いと思う。

映画でもたとえば1999年にスターウォーズのEpisode Iがシリーズ4作目として16年ぶりに公開されたときは米国でも日本でも大いに盛り上がった。もし今後Episode VIIが公開されるようなことがあれば、世界中のファンが狂喜するだろうということは想像に難くない。

好きなものは特別で、他のものでは置き換えられないように感じる。しかし、それは本当に自分が唯一好きなものなのだろうか?世の中には数えきれないほどの作家がいて、毎日数多くの新しい本が書店に並ぶ。本当に村上春樹じゃなくては、だめなのだろうか?

一度好きになるとそれ以外のことは考えにくい。その時点ではおそらくその好きな物のことが本当に一番好きなのだと思うが、それしかないかというそんなことはないと思う。試してみたら、その好きなものと同等に好きになれるものもたくさんあるはずだ。

スポーツにおいてもお気に入りの選手がいてその選手が活躍する姿をみたいということはよくある。しかし、本や音楽において同じ作家、歌手、作曲家にある程度安定した作品を期待できるのと異なり、スポーツの選手は、残念なことにある程度以上の年齢になると最盛期のパフォーマンスを期待できなくなっていく。ワールドカップやオリンピックで以前活躍した選手が代表として選ばれなくなると、もう以前のようには楽しめないと思い、とても寂しく感じるものだ。しかし、実際には、ほとんどの場合、終わってみればまた新たなヒーローが生まれ、いつの間にか以前のスターの影は薄くなる。

好きなものにこだわるのは悪くないことだと思うが、こだわり過ぎるのはどうだろうか。今好きなものは、今までの人生でたまたま出会ったものである。もちろんそれはそれで大事なものだが、未だ出会っていないものに対してオープンな気持ちでいると、これからも自分の好きなものにたくさん出会えそうで、楽しみが増えていいのではないかと思う。


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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。