ランダム


「まずは笑わせ、次に考えさせるような研究」に対して与えられるイグノーベル賞という有名な賞がある。昨年その経営学賞を受賞したのは、アレッサンドロ・プルチーノ、アンドレア・ラピサルダ、セザレ・ガロファロという3人のイタリア人で、その研究内容は、「階層組織において、実績に応じて昇進させるよりも、ランダムに昇進させた方が、組織として効率がよい」というものであった。

実はこの理論は組織内の人の感情やモチベーションを一切考慮していないし、昇進後に必要な能力を一切考えずに昇進させることを前提としているので、現実の組織でも成り立つと主張するのは難しいだろう。しかし、考え方は面白いし、ランダムに昇進を決めているということをその組織の構成員に明かさなければ、もしかしたら意外と上手くいくかもしれない。人はランダムに行われることでもランダムであることに気がつかなければそこに何らかの意味を見出そうとする。ランダムで選ばれての昇進だとしても、それがランダムだということを知らなければ、自分が高く評価されていると思い、モチベーションが上がりそれまでより頑張るかもしれない。

結果に大きな違いのないことであれば決断する方にとってもランダムは助かる。自分で考え抜いた上で残った選択肢がほとんど同等なものだと思えば、後は鉛筆を転がして決めたらいい。厳密にどちらがいいかを判断することより、たとえ結果としてベストな選択肢を選べなかったとしても、迅速な判断の方が大事であることが多い。

話は少し変わるが、今、自宅でDVDのネット宅配サービスを使っている。そのサービスのいいところは観たいDVDを送ってくれるところではなく、あらかじめ作っておいた自分の観たいDVDリストの中から、毎回ランダムに(実際には選ぶロジックがあるだろうが)DVDを選んで送ってくれるところだ。ランダムなので、選ぶ時間もかからない上にちょっとしたわくわく感がある。毎回自分の観たいDVDを選ぶという作業は、それはそれで楽しいことではあるが意外と負担にもなる。

今でもあるかどうかわからないが、以前、ジュースの自動販売機に「お楽しみ」というボタンがついているものがあった。お金を入れてそのボタンを押すと販売機で売っているいずれかのジュースがランダムに出てくるというものだ。ランダムといってもそこで売っているジュース以外は出てこないので、普通に考えれば、飲みたいジュースを選べばいいと思ってしまうのだが、私の周りでは「お楽しみ」ボタンが人気だった。この場合は、運を天に任せる楽しさが大きかったと思うが、判断を機械に任せることによる負担の軽減も多少はあったと思う。

量子力学の世界では、確率的にしかおきないようにみえる現象が存在する。粒子の運動や位置を特定できない(ランダムにみえる)ことに対し、「神はサイコロを振らない」とアインシュタインが反論したのは有名な話だが、現在のところ「神もサイコロを振る」(確率的にしかわからない事象がある)という見方の方が優勢なようだ。

神様でもサイコロを振るのだからというわけでもないが、すべての判断をロジカルに厳密に行う必要はなく、天に任せる部分があってもいい。そうすることで自分にとって本当に大事な判断に集中することができる。


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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。