ボラティリティ


300円の宝くじを買った場合、戻ってくる金額の期待値はせいぜい150円くらいだろう。今週から販売されているサマージャンボを1枚(300円)購入した時の当選金の期待値は141円程度である。宝くじを買う人は、確実な収益を期待するのではなく、300円が0円から2億円までの幅に広がるというボラティリティ(変動性)を楽しむためにお金を払っている。まさに「夢を買う」のだ。

買えば買うほど、当選金は自分が投資した額の半分以下に収束していくので、宝くじを買うことは経済的にあまり合理的とは言えない。しかし、300円程度あるいは当選金の期待値141円を差し引いた159円程度の出費で、わくわく感が持てるのであればそれはそれで安い買い物なのかもしれない。不景気で給料もあがらないし、夢ぐらい見させてほしいという人もいるだろう。そういう人は、代価を払って、「自分の運命に幅を持たせておく」ことが必要なのかもしれない。

今より悪くなる可能性が高いにも関わらず「自分の運命に幅を持たせておく」傾向は他のいろいろな場面でも見られる。自分の実力を測る場面を避けたり、よくないことが起きているのに目を背けたりする、というのも同じことだ。要するにすべてを知ってしまうことで何かを諦めざるをえなくなる状況に陥るよりも、未知の部分を残し「まだ駄目と決まったわけではない」状態にしておきたいという心理がある。購入した株式の価格が下がったときに売るまでは損が決まったわけではない、として、同じ株を持ち続けようとするのも同じ心理だろう。自分にとってよくないことを確定させないように、代価を払ってでも、確定を先延ばしにする。

この先延ばし戦略は宝くじの場合だけでなく、一般にあまり得策でない。なぜなら先延ばしにしてもやはりよくない運命から逃れることはできず、むしろ先延ばしすることで状況が悪くなるケースが多いからだ。それがいいことであっても悪いことであっても確定しないと次の一歩が踏み出せない。白馬に乗った王子様は待っていても来ない、ということを知ることで初めて自分で前に進むことができる。

せっかく一人の人間として生まれてきたからには自分の力で自分の人生を切り開きたい。そのためには、結果を恐れて確定を先延ばしにするのではなく、結果を早く出して、それが駄目なら改善してまたチャレンジする、というようにしたい。曖昧にしていた嫌なものを直視する瞬間は痛みを伴うが大抵の場合痛みはそれほど長く続かない。ボラティリティを大きくして淡い期待を持ちながら待ち、結局うまくいかないよりもよほどいい。


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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。