入試の公平性


米国のハーバード大学が入試においてアジア系アメリカ人を不当に差別しているとして学生団体から訴訟を起こされている。裁判が始まり、その中で今まで公開されることのなかった選考のプロセスが明らかになりつつある。今のところ大きなサプライズはないが興味深い内容もある。10/18付けのウォールストリートジャーナル紙では、裁判の中で示されたハーバード内部の機関による調査として、入試の選考においてどのような観点で審査するとクラスがどのような人種・民族の構成になるかというシミュレーションを紹介している。学力だけで判断すると入学者の43%がアジア系アメリカ人になるが、スポーツ選手や同窓生子女を優先して入学させるとその率が31%に下がり、さらに課外活動や人物についての評価を考慮すると26%にまで下がる。実際には、人種、性別、その他のことも考慮されるため、クラス2007からクラス2016(2003年から2012年にかけて入学)までの10年間で実際にハーバードに入学したアジア系アメリカ人は19%に過ぎない。対照的なのはアフリカ系アメリカ人で学力のみで選考していたとすると入学者の1%未満になるが実際の入学者の中では10%以上を占める。学力の高いアジア系アメリカ人に対して不当な差別をしているという見方もあるだろうが、個々人の能力を多面的にバランスよく見ているということもできる。裁判でどのような判決がなされるか注目に値する。

折しも日本では大学入試、特に医学部の入試において内々に得点調整されていたことが問題になっている。東京医科大学の一般入試において女子の受験生が一律に減点されていたり、昭和大学医学部の入試において現役生に加点がなされていたりしたことが明らかになった。東京医科大学の男女による得点調整は今の社会においては受け入れられにくいと思うが、昭和大学医学部の現役生、一浪生に対する加点はそれがたとえば在校生の医師国家試験の合格率に影響を与えるのであれば合理的であるとも言えるし、必ずしも不公平とも言えないように思う。少なくとも一部で報道されているような「不正入試」には当たらないように思う。昭和大学の場合は、同窓生子女を優遇していたことも問題になっており、それも個人的にはあまり好ましいことではないと思っているが、ハーバードでも公に行われていることで(今回の裁判でも今のところここは論点になっていない)、「不正」とは言い難い。

日本の大学受験においてはAO入試や推薦入試も含めれば、出願資格として現役生であることを条件としているところもあれば既卒生を受け入れていても1浪までしか認めないところもある。また高校受験において都立高校のように男女異なる募集人員を設定しているところもある。東京医大や昭和大医学部のケースが不公平というならばこれらも間違いなく不公平だと思うがそこまで問題になっていないのは募集の段階で明確になっているからだろうか。

より優秀な学生を求めて、大学がある程度自由に入試の形態を決めることは、大学間の競争を促す上でも望ましい。その意味では評価の観点を募集要項の中で明らかにしていれば現役生や同窓生の子女を優遇したりする大学があってもいい。多様な評価の仕方が広まり、どの大学がどのような観点で評価するかということが明らかになっていれば、受験生は自分に合った大学選びをしやすくなり大学と受験生双方にメリットがある。ただ、その場合も、人種や民族、性別、等、生まれつきの属性で差をつけることは好ましくない。クラスの多様性を保ちよりよい教育環境を実現するという目的のためにある程度調整するということには一定の説得力があるので難しいところではあるけれど。


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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。