大学と受験生のコミュニケーション


大阪大学に続いて、京都大学の入学試験で出題ミスが見つかった問題について、大手の新聞社が挙って社説で採り上げて改善を求めている。

「京大は、解答を導くまでの経緯や思考力を重視している。想定外の解き方がある可能性を考慮し、解答例や採点基準を公表していない。これが、ミスの発見が遅れた一因ではないか。 今後は採点時に予備校の解答速報などを参考にし、誤りがあれば採点基準を変更するという。ミスがあった際の救済には、迅速な対応が不可欠だ。解答例を開示することも検討課題だろう。」(2018.2.3 読売新聞 社説抜粋)

「京大は解答例を示していなかった。『解答の経緯や思考力をみることを重視しており、これが答えだと示せない問題もある』と説明した。だが、採点に幅があるとしてもミスが起きることを前提に、早く解答例を公開すべきだ。それでミスが速やかに見つかれば、早めに受験生の軌道修正も期待できる。」(2018.2.3 毎日新聞 社説抜粋)

「京大は入試の解答例を公表していない。記述式の問題をふまえて、『知識だけを問うのではなく、解答へのプロセスを見たい』と説明する。様々な角度から受験生を評価しようとする姿勢は否定しない。しかし今回のように選択式の問題の解答まで非公表とする理由にはならない。専門的な問題であるほど、多数の目にさらして早期発見することのメリットも考えるべきだ。」(2018.2.4 朝日新聞 社説抜粋)

「京都大は入試の解答例を公表していない。今後は予備校など外部の解答例を参照してミスの防止と早期発見に万全を期すという。内向きの姿勢のままで信頼を回復できるのか、疑問を禁じえない。」(2018.2.6 東京新聞 社説抜粋)

いずれの社説も京大が解答例を公表していないことを似たような論調で批判している。確かに正解のある問題であれば問題および解答例を公表することのデメリットはあまり思い当たらない。塾や予備校に間違いを指摘されたり問い合わせが増えたりして大学側の面倒が増えることぐらいだろう。各社が同じような主張をするのも頷ける。

今では多くの大学でアドミッションポリシーを掲げているが建前だけの抽象的な表現に留まるケースが少なくない。ただ、アドミッションポリシーには建前しか書かれていなくても、入試には本音が現れる。大学の入試はどんな学生がほしいかという意思表示の場であり大学が唯一本音で受験生とコミュニケーションを取れる接点だ。こういう問題にこういう解答が出せる人が欲しいということを明確にすれば受験生はそこを目標に正しく努力することができる。

難しいのは正答がない場合だ。一般入試では記述式であっても正答のあるケースが多いが、自分の意見を述べさせるような問題の場合は模範解答を示すことが却って誤解を生むこともあり得る。AO推薦入試のように志望理由を聞いたり自己アピールを促したりする場合はそもそも模範解答が作れない。ただ、だからといって大学の求めるものを受験生の想像にすべて任せるとするのは少し不親切だ。洋々のようにある程度まとまった人数の受験生をサポートしているところでは毎年の合否結果から学校毎の評価基準をある程度把握することができるがそういう情報を持たない受験生は抽象的なアドミッションポリシーから求められていることを推し量るしかない。AO推薦入試のためにやみくもにボランティアをしたり大量の資料を作成したり、全く外れではないけれど大学にとっても受験生にとってもあまり得にならない努力を促してしまう可能性がある。大学側が評価のポイントや考え方をより具体的に伝えれば受験生はその大学が求める学生像に近づくための正しい努力ができる。

評価のポイントや考え方を示すことは実はそこまで簡単ではない。あまり具体的にし過ぎるとそこの部分だけを準備してくる受験生が出てきたり、本来は違う形でもよいのにそこだけにしか目が向かなくなってしまう可能性がある。受験生が形だけの、あるいは、偏った「対策」を行わないようにするためにある程度曖昧な部分を残すことも必要になる。1回で方針を確実に伝えるのは難しいので、入試を実施する度にその結果とともに受験生の回答(あるいは出願書類や面接での受け答え)の傾向とそれに対してどのような方針で評価をしたのかを示せるといい。

正答の公開も含めて、入試を通して受験生とより丁寧なコミュニケーションを行うことは短期的には大学の負担になるかもしれないが、大学が望むような努力を受験生に促すために有効で、それは入学する学生の質が高まることにもつながり、長期的には大学にとってのメリットも大きい。


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洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。