想像力


初期のウルトラマンの映像を見ると失礼ながらとても「ちゃっちい」感じがしてしまうが、それで十分楽しめるのは見る側が想像力で足りない部分を補っているからだ。今はCGの技術も進んでいてよりリアルな映像制作が可能で、宇宙でも近未来の世界でも現実感のある映像を楽しむことができる。ウルトラマンが制作されてから50年以上経つが、その間の技術進歩の大きさを実感する。ゲームの世界でインベーダーゲームが流行り出したのはウルトラマンより少し後だが、初期のビデオゲームの画面も簡素で侵略者にやられる、という実感を持つためにはやはり想像力が必要だった。今のビデオゲームは映像や音楽がリアルでここでも技術の著しい進歩を感じる。

この数十年の間の技術の進歩は疑いようがないが、一方で、見る側、やる側の楽しさがその進歩に応じて大きくなっているとは限らないとも思う。作り手の技術の高さには感銘を受けるがエンターテインメントとしての質の高さについては判断が難しい。たとえば、現在も舞台で演劇が行われているが当然ながらリアリティという意味ではCGを駆使した映像には及ばない。多くの舞台では簡単なセットがあるだけだ。だからといってエンターテインメントの質が最新の映像に劣るというわけでもない。

さらに言えば落語のように言葉だけで楽しませるエンターテインメントも健在だ。噺家の表情や仕種も大事ではあるがほとんど言葉だけで楽しませる。聴衆は自分でそれぞれの場面を頭に描きながら噺を楽しむ。スポーツの実況をテレビで見られるときに敢えてラジオで聴く人はあまりいないだろうが、だからといってラジオでスポーツを楽しめないわけではない。子どもの頃、テレビ放映がないときにプロ野球の試合をラジオで聴くことがあった。ファインプレーがあったりすると映像で見たかった、という思いを抱いたが、試合を楽しむという意味でテレビに劣っていたわけではない。

より強い刺激を求めてリアルな映像や音響を求めてしまうが、映像や音がなくても人は言葉から脳に新たな世界を描くことができる。いずれの場合でも結局は自分の脳の中で楽しむものであり、楽しめるかどうかは自分自身の想像力に負うところが大きい。より大きな楽しみを得るために、徒に刺激を求めるのでなく、自らの楽しむ力を養うという方向性で考える手もある。


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