改革の目玉


大学入学共通テストで結局導入が見送られた英語民間試験の利用と国語・数学の記述式だが、元々公平性や実現性の観点から批判も多い中、2021年度の入試への導入にこだわったのはなぜだろうか?もちろん大学入試改革の理念を体現させるという意図があったのだろうが、導入見送りの決定以前にすでに及び腰になっている大学も少なくなかった。東大や京大では結局英語民間試験の受験を必須としなかったし、英語外部資格を出願の要件として挙げている大学でも大学入試英語成績提供システムの利用は必須とせず曖昧な運用をしようとしているところが多かった。記述式についてもマーク式とは別に5段階で評価する予定だった国語の記述式は審査の対象外とする大学が相次いだ。それでも英語民間試験の利用と国語・数学の記述式の導入を推し進めてきたのは、それが大学入試改革の目玉だったからだろう。「明治以来最大の教育改革」を謳うからには、これこそ入試改革というわかりやすい何かが必要で、最後に残っていたのが英語民間試験の利用と記述式問題の採用で、ここは死守したかったというのが本音ではないだろうか。

大学入試改革の場合は、大きな混乱が生じたものの、二つの目玉がすでに形骸化しつつあったところで、結局導入も見送りになったことで、受験生にとってそこまで大きな害にはならなかった。ただ、本質から外れた目玉にこだわると得てして弊害を生じるものだ。

企業による商品やサービスは定期的に機能を追加したり使いやすくしたりするなど改善を繰り返していくことで初めて顧客に継続して購入してもらえる。モデルチェンジをするときには既存顧客に買い替えを促す一方で新たな顧客を開拓しようとするため、マーケティングの観点からどうしても目玉的な要素を用意したくなる。車で言えば自動運転機能やAIカーナビ、スマホでいえば折り畳み機能や5G対応、といったところだろうか。それぞれの企業が顧客を喜ばせるために改善を積み上げていくことで社会に便利なものが増えるのはよいことだ。しかし、目玉を用意するために目を引く要素ばかりに力を入れて真に必要とされる改善が後回しになってしまうのは本末転倒だ。無理矢理目玉を作らなくても、目立たたないところで地道な改善を重ねていく方が結局顧客もついてくる。


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