2021年度大学入試改革 進捗状況について


先週16日に文部科学省から高大接続改革の進捗状況についての発表があった。2021年度に予定されている大学入試改革について概ね高大接続システム改革会議で議論されていた通りで大きなサプライズはないが今後の改善を期待したい点がいくつかある。

1. 共通テストの記述式問題について

センター試験に代わる「大学入学共通テスト(仮称)」だが国語(現代文)および数学(数学I)で記述式問題が出題される。大学入試センターからそれぞれのモデル問題例も公開されている。いずれも悪くない問題だとは思うが記述式にすることによるオペレーションの複雑さを正当化するほどのメリットを感じない。「思考力」「判断力」を測るという意味では既存のセンター試験とそこまで変わらないし、「表現力」を測るというには少し物足りない。オペレーションと内容の両方を追求した結果、中途半端な内容になっている感が否めない。また国語について自治体のガイドラインや契約書の内容が題材として採り上げられているが若干実用性を意識し過ぎているきらいがある。これは賛否両論あると思うしマークシート式問題の部分でカバーされるのかもしれないがセンター試験の評論および小説の組み合わせの方が国語の本質的な力を測ることができるように思う。

2. 共通テストの実施回数について

大学入学共通テストは1年に1回だけ1月中旬の2日間で行われることになった。センター試験と同様の日程だが記述式試験があるため各大学への成績提供時期は現行の1月末から2月初旬という設定より1週間程度遅らせる方向だという。当初検討されていた複数回実施は記述式問題採用の可能性が濃厚になるにつれて残念ながらだいぶ影を潜めてしまった。受験生にとって試験の複数回実施は結果に対して納得をしやすいことと他の予定と調整しながら準備を柔軟にできることの2つの大きなメリットがある。その年度の最後のチャンスが1月にあるのは悪くないと思うがその前段階としてたとえば7月や10月にも試験があれば様々な活動をしている受験生も対応しやすい。

3. 入試区分について

中央教育審議会では「一般入試」「AO入試」「推薦入試」という現状の大学入試の3つの区分を廃止してすべての入試で今のAO推薦の要素を採り入れるという方向で議論が進んでいた時期もあった。しかし、今回の進捗状況の発表においては基本的に3つの区分は今までと変わらず名前だけがそれぞれ「一般選抜」「総合型選抜」「学校推薦型選抜」に変わる予定だという。AO推薦入試において大学の授業についていくための学力を評価できていないという問題に対して、小論文、プレゼンテーション、共通テスト、資格・検定試験の成績、等のいずれかを必須化することで改善するとのことだ。今回の進捗状況の発表の前に一部の新聞では「AO入試 学力試験を義務化へ」という大きな記事が出ていたが、文部科学省の発表資料を見る限り、現状と大きく変わることはなさそうだ。一方で一般入試においても書類、面接、集団討論、プレゼンテーション、等の積極的な活用を促すとあるがこちらもどこまで変わるかは疑問だ。一般入試とAO推薦入試のそれぞれのよいところを採用するという方向性を明確にするのであれば3つの区分は廃止すればいい。

4. AO入試の出願時期について

AO入試(「統合型選抜」に名称が変更になるとのこと)の出願時期が現状8月以降となっているのが9月以降に変更になる。慶應義塾大学総合政策学部・環境情報学部(SFC)のAO入試、慶應義塾大学法学部のFIT入試、早稲田大学政治経済学部のグローバル入試、等は現状8月に出願期間が設定されているがこれらは9月以降に変更されることになる。「早期合格による高校生の学習意欲低下」という問題意識に対するアクションということだが本来学習意欲は高校生が元々持っている知的好奇心を刺激することで高めるべきであり高校生の学習意欲を大学受験の時期でコントロールしようというのはあまり望ましくない。出願時期を1ヵ月遅らせることでもう1ヵ月だけ学習意欲をキープするのではなく大学受験を餌にしない学習意欲の向上の方法を考えたい。その上で出願期間は各大学が戦略的に自由に設定すればよい。

5. 英語の民間資格・検定の活用について

英語の民間資格や検定試験の活用は適切な英語力の評価という意味でも受験生の自由度という意味でも大いに賛成だ。英語はできるけど日本の大学受験の英語はできない、というような人も少なくなるだろう。すでにAO推薦入試では活用されていて運用上の懸念もあまりない。唯一よくわからないのが「高校3年の4月~12月の間の2回目までの試験結果を各大学に送付することとする」となっている点だ。複数の種類の資格・検定が対象となるであろう中それが可能なのかどうかもわからないが受験回数と期間を制限しようとしているのであればそれについては反対したい。受験生の利便性と英語力向上への意欲を考えると過去2年以内のどの試験の結果でも提出してよい、という形が望ましい。