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本記事では、『都立高校推薦入試の概要と対策』を踏まえ、都立西高校の推薦入試の概要と、その対策をお伝えします。

入試の概要・倍率推移

募集人数と出願資格

・男子32名、女子30名(定員の20%)

次のア~ウのすべてを満たし、本校を第一志望とする者
ア 令和2年12月31日現在、東京都内の中学校に在籍し、令和3年3月に都内の中学校 を卒業する見込みの者
イ 在学している中学校の校長の推薦を受けた者
ウ 保護者と同居している者で、東京都内に住所を有し、入学後も引き続き都内から通学す ることが確実な者

調査書および各試験の配点

・調査書(9教科の5段階評定の素点):360点
・個人面接(自己PRカード):240点
・作文試験:300点
計900点

※ 2021年度は新型コロナウイルス感染症対策のため、集団討論は実施されません。集団討論が実施される年度では、「個人面接+集団討論」で240点の配点となります。

西高校は、試験全体における内申点の配点を4割としています(他のトップレベル都立高校5割)そのため、内申点「1」は、小論文試験や面接試験のおよそ「8点」と同等の重みです。このことは記事の後半で詳しく解説します。

出願者数と倍率

西高校推薦入試倍率推移(洋々調べ)

男子は3倍前後、女子は4倍前後で推移。一時期、男女の倍率が近づき同等になりましたが、近年はふたたび男子の倍率が下がりつつあります。

各試験の分析と対策

自己PRカードと面接

以下は、公式ホームページに記載されている西高校の「求める生徒像」です。

西高校の「求める生徒像」

  1. 教科と教科以外の活動のそれぞれにおいて、得意な分野をもっている生徒
  2. 読書を通じて、幅広い教養を身に付けようとする生徒
  3. 他者のため、集団のために行動することができる生徒
  4. 自然現象、社会事象、文学、芸術、スポーツ等の分野に、強い興味や探究心をもっている生徒
  5. 自己の生き方について将来の展望をもち、諦めずに挑戦する意欲の高い生徒

※ 特に推薦選抜においては、上記1から5のいずれかの項目で、本校入学後も指導的役割を果たし ていこうとする生徒が望ましい。

西高校は「求める生徒像」が具体的に示されています。この生徒像に照らし合わせて受検者を評価するのが面接試験です。個人面接は自己PRカードの内容に基づいて行われるため、面接でアピールしたい事柄と自己PRカードに一体感を持たせるように意識して準備しましょう。

自己PRカードの紙幅は限られているため、3つの設問で上記5つの生徒像に沿うことをアピールをするには、一つひとつの解答の密度を高くする必要があります。各設問に対して答える事柄を下記のように構成すると、まとめやすくなるでしょう。

1 志望理由について
「4.自然現象、社会事象、文学、芸術、スポーツ等の分野に、強い興味や探究心をもっている生徒」と関連づける

2 中学校生活の中で得たことについて 
「1. 教科と教科以外の活動のそれぞれにおいて、得意な分野をもっている生徒」
「2. 読書を通じて、幅広い教養を身に付けようとする生徒」
「3. 他者のため、集団のために行動することができる生徒」
と関連づける

3 高等学校卒業後の進路について
「5. 自己の生き方について将来の展望をもち、諦めずに挑戦する意欲の高い生徒」と関連づける

面接は受検者一人につき10分から15分程度。自己PRカードに書かれた内容を中心に、志望理由、出願の動機、進路実現への意欲などが問われます。『都立高校推薦入試の概要と対策』で解説した通り、個人の「過去・現在・未来」について、さまざまな角度から質問がなされると想定しておきましょう。

なお、今年度は集団討論が実施されないため、例年と比較して、面接と自己PRカードの重要性が高まると考えられます。

作文試験

西高校の作文試験は、例年同じ形式です。著名人が残した言葉に対して、自身の感じることや思うことの記述が求められます。試験時間は50分、字数は600字以内。提示される「言葉」は、近代以降の学者や知識人と呼ばれる人々が残したものが多く、どの年度のものも、これから高校で学びを深める受験生たちには指針となるような言葉ばかりです。

作文試験について、西高校は「新しい表現に触れたときに、それをどう見て、どう受けとめ、どう考えるか表現してほしいという意図がある」と説明しています。目の前の言葉と向き合い、それをどう受け止めたか、何を感じ、考えたか、根拠を持って述べることが重要です。試験名は「作文」となっていますが、根拠を示して論を組み立て読み手を納得させる「小論文」と捉えた方が、対策が立てやすいかもしれません。「何を感じるか、どう考えるか」と「どう表現するか」の2つを意識して600字を50分以内で書ききらなくてはならないため、解答のスピード感も身につけたいところです。

西高校の公式ホームページで10年分以上(!)の過去問が掲載されているため、確認してみましょう。

西高校作文試験過去問

内申点は本番の試験でカバーできる

「内申点が45点に届いていないから、推薦入試では圧倒的に不利ではないか」と考える受験生は多いかもしれません。しかし、合格者の得点分布を分析してみると、内申点は本番の試験でカバーできることが分かります。

下記の表は、各試験における全受検者の点数の分布です。

集団討論・面接試験

(西高校資料より洋々で独自に作成)

※上記の表は集団討論の点数も含まれています。集団討論の不実施に伴い、今年度は分布が多少変動する見込みです。

集団討論・面接試験では、240点満点中181点以上を獲得している3階層(右から3つ目の山まで)におよそ70名の受検者が分布しています。点数のばらつきが大きく、最大で179点の差があることが読み取れます。内申点が高くとも、事前にしっかり対策をしておかないと大きく差をつけられてしまう可能性が否めません。


(西高校資料より洋々で独自に作成)

作文試験では、定員となる上位60名ほどが得点率75%以上を獲得しています。西高校の作文試験は面接試験よりも配点が高く、試験全体のおよそ3割を占めるため、ここで合否が分かれるといっても過言ではありません。

内申点の得点は、900点満点中360点のため、内申点「1」は、試験の得点に換算すると、およそ「8点」の差となります。つまり、内申点が45の受検者と42の受検者であったとしても、本番の試験において、面接と小論文で合わせて24点をカバーできれば、この2人が同じ土俵で戦うことは可能なのです。

また、西高校は作文試験が全体配点に占める割合が相対的に大きいため、事前準備に適切な対策さえすれば、本番で巻き返すことは十分に可能です。他のトップレベル都立高校よりも、「推薦で戦いやすい学校」であると言えます。

このように、内申点のディスアドバンテージは本番の試験でカバーが可能です。「45もないから受けても落ちるだろう」と諦めずに、対策を万全にして臨んでみましょう。

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