内申点は「45」なくていい! 都立高校推薦入試の全体像 2022
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「都立高校の推薦入試は宝くじ」という言い方を聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。
実際、都立高校の推薦入試は狭き門かもしれません。しかし、「宝くじのようなものだから、受験するだけ無駄」「内申点が45でないと受からない」といった言説は誤りです。
都立高校の推薦入試は、適切な対策をすれば、内申点が45に届かなくても十分に攻略可能性のある入試だからです。
本記事では、都立高校推薦入試の概要と大局的な戦略についてお伝えします。
都立高校推薦入試の概要
都立高校の推薦入試では、主に以下の4つを総合して合否が判定されます。
・調査書(内申点)
・個人面接
・小論文・作文
・集団討論 ※2022年度入試では実施されません。
調査書(内申点)
学校の成績や活動、生活態度に関して、総合的な評価が記載されている記録のこと。各教科の評価は、評定に加え、「関心・意欲・態度」「思考・判断」といった観点別評価もつけられます。その他、欠席日数、委員会や生徒会、部活動などの活動記録、本人が学校生活をどう過ごしているかといった総合所見なども記載されます。
個人面接
一人当たり10分程度の個人面接が課されます。志望理由のほか、受験生自身の過去や、理想とする高校生活について、さまざまな角度から質問がなされます。一問一答のような形式ではなく、受験生の答えに対してさらにそれを深く掘り下げる傾向にあるようです。
また2022年度は、例年面接とセットでの評価対象となる集団討論が行われないため、面接の重要性がより高まると考えられます。
自己PRカード
面接は、事前に提出する自己PRカードをもとに行われます。自己PRカードで課されるのは、以下の3つの質問です。それぞれの質問を答えるにあたっては、下記を参考にしてみてください。
質問1:志望理由について
自身がその高校に進学したい理由を並べるだけでなく、志望校が求める生徒像に自身が合致すると考える理由や、その高校でなければならない必然性を述べます。
質問2:中学校生活で得たことにについて
学校生活の中で担った役割や、優れた能力・資質(各種検定の資格取得なども含む)、コンクールや大会で収めた成績のアピールをします。また役割や活動を通じて起きた自分自身の変化や成長に関しての記述が重要です。調査書の中の「諸活動の記録」という欄の内容と合致している必要があるため、担任の先生とも相談するとよいでしょう。
質問3:高等学校卒業後の進路について
卒業後の進路の目標を具体的に述べます。特に、勉強を深めたい分野や、志望する大学、学問分野、取り組みたい活動や目指す職業を具体的に示すように意識しましょう。
小論文・作文
テーマや課題文が与えられ、数百字の小論文もしくは作文が課されます。与えられた資料を正確に読み取ったうえで、説得力のある根拠を添えて自分の意見を提示できるかどうかがポイントです。特に上位校の場合、資料読み解きの難易度が高くなる傾向にありますが、背景知識の有無で合否が分かれるような試験ではありません。
課される問題は高校ごとに異なるため、志望校の過去問を解いて、問題の傾向や出題形式を分析すると良いでしょう。
集団討論 ※2022年度入試は実施なし
数人で一つのグループとなり、出題されたお題に沿って討論します。作文同様、出題形式は高校によって異なり、グループに試験官がついて議論を主導する高校もあれば、受験生のみで議論をさせる高校もあります。
作文と集団討論で過去に出題された問題は、下記のページで確認できます。
都立高等学校入学者選抜における推薦に基づく選抜で実施した集団討論、作文・小論文、実技検査等のテーマ一覧
内申点の差は埋められる
高校によって各試験の配点は異なります。たとえば、日比谷高校と西高校の配点を比較してみましょう。
日比谷高校
・調査書:450点満点
・個人面接:200点満点
・小論文:250点満点
計900点満点
西高校
・調査書:360点満点
・個人面接:240点満点
・作文:300点満点
計900点満点
調査書が合計点に占める割合は、日比谷が5割であるのに対し、西は4割です。この内訳に沿って計算すると。内申点(評定)の「1」は、推薦入試における点数に換算すると、日比谷では「10点」、西では「7~8点」ということになります。
つまり、内申点が45に届いていなかったとしても、面接や集団討論、小論文・作文の試験での巻き返しは十分可能ということです。たとえば、内申点に5点の差がある受験生が二人受験をした場合、3つ(2022年度は面接と小論文・作文の2つ)の試験で40点から50点をカバーできれば、内申点が低いほうの受験生は、高いほうの受験生と十分に同じ土俵で戦うことができます。
「世界観」と「実現可能性」が重要
都立高校において求められる人物像とは、フラットに言えば、「あの人、うちの卒業生なんだよ」と自慢できるような優秀な人物です。
では、「優秀」とはどのよう能力を指すのでしょうか。昨今、「優秀さ」の定義は大きく変わりつつあります。これまでは、知識をより多くインプットしていることが優秀さの証とされてきましたが、近年では、インプットした知識をアウトプットに変える力と、自らが為したアウトプットを発信する力が求められるようになっています。こうした力は、先行きの不透明な現代において、変化に対応しながら生き抜く上で非常に重要な力であると捉えられているためです。
「世界観」
入試においてこの2つを伝える鍵となるのが「世界観」。過去に自分がどのようなことを考え、為したのか。その結果の今の自分はどのような人物なのか。高校生活やその先の将来をどのように描いているのか。その描く未来に向けて、何をしたいと考えているのか。このように、自分自身を説明する「過去-現在-未来」の時間軸が「世界観」です。
試験官は、自己PRカードと面接で「世界観」を評価します。つまり、自己PRカードと面接は、受験生自身の「世界観」を紙面と対面という2つの方法でアピールする場とも言えるでしょう。そのため、この2つは一気通貫で準備する必要があります。
「実現可能性」
同時に重要であるのが、「世界観」における未来を実現するための足腰、すなわち「実現可能性」です。具体的には、理解力や思考力、表現力、社会性などであり、こうした力を測るために、作文・小論文試験や、集団討論が行われます。描いている未来を「絵に描いた餅」にしないだけの基礎的な知的体力を持っているかが評価されます。
一人ひとりの特性に合った準備が必須
都立高校推薦入試において、一般的な対策と呼ばれる対策や、絶対必勝法のような対策は存在しません。
推薦入試が個々人の世界観や特性を奥深く評価する入試である以上、準備は必然的に人によって異なります。自分のどんな部分を発信し評価してもらいたいのかを明確にし、それらをいかに伝えるかがポイントです。
また、志望する高校によって、調査書と各試験の点数の比重は異なります。自身の志望校の配点を分析すると、各試験に向けた準備をより効率的に進められるでしょう。
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