一般選抜と総合型選抜を両立するには?―4つの指標で受験戦略を立てよう
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一般選抜と総合型選抜・学校推薦型選抜が両立しやすく
2021年現在、私立大学の一般入試の合格者数は数年前と比較して絞られつつあります(*1)。一方で、総合型選抜・学校推薦型選抜(旧AO入試、公募制推薦入試、学校推薦など)の合格者数は増加傾向にあります。
また、国公立大学でも総合型選抜・学校推薦型選抜が積極的に取り入れられつつあります。2021年度入試において、総合型選抜を実施した国公立大学は国公立大学全体のおよそ57%、学校推薦型選抜を実施した国公立大学は96%にのぼります。
以下のグラフは、2020年度(令和2年度)入試における国公立大学と私立大学の入試別入学者数の割合のグラフです。
また、以下のグラフは、2013年度と2020年度の慶應義塾大学と早稲田大学における試験ごとの合格者数を比較したものです。
参考:洋々調べ
これらのグラフから分かるように、入学者全体に対し、総合型選抜・学校推薦型選抜による入学者が占める割合は年々増えつつあり、2021年現在は、およそ半数となっています。この割合は今後も増えていくことが予想されます。今や、総合型選抜・学校推薦型選抜は、一般選抜と並んで、受験における選択肢のひとつと考えて差し支えないと言えるでしょう。
加えて、昨今の大学入試改革に伴い、各大学の一般入試は、知識の多さや処理能力を問う傾向から、学力の3要素を測る(*2)方向へと舵を切りつつあります。そして従来、総合型選抜・学校推薦型選抜では、面接やプレゼンテーション、小論文、実技などで、知識に偏らない学力を測るための試験を課していました。
これらのことから、今後は、一般入試と総合型選抜・学校推薦型選抜の試験内容の方向性がより近づいてゆくと考えられます。これから本格的に大学受験を考え始める人は、「一般入試と総合型選抜・学校推薦型選抜をどう組み合わせて受験に臨むか」という視点から戦略を立てると、効率的に準備ができるでしょう。
*1:2016年度以降、私立大学において入学定員充足率が1.0倍を上回った際の私学助成の不交付・減額の基準が段階的に厳格化されました。それに伴い、各大学の一般入試において合格者数を絞る流れが生まれています。
*2:2020年大学入試改革に伴い、文科省は「『知識・技能』『思考力・判断力・表現力』『主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度』の3つを多面的、総合的に評価」するという宣言を出しました(参考:大学入学者選抜改革推進委託事業(平成28年~平成30年実施分))。
4つの指標で自分の立ち位置と強みを把握する
では、一般入試と総合型選抜・学校推薦型選抜を併願するにあたって、どのように戦略を考えればよいのでしょうか。
受験戦略を考える上で重要なのは、今の自分の立ち位置と強みを理解することです。以下の4つは、それらを考える際に役立つ指標です。
1)学力:高校の学力レベルや、全国模試における個人の偏差値 2)評定平均:(出願要件として課される場合、3.5から4.2程度を求める大学が多い) 3)活動実績:課外活動や部活動、習い事、研究活動など、勉強以外に続けてきたこと 4)英語資格試験・検定:(出願要件として課される場合、英検2級相当以上を求める大学が多い) |
4つすべてにおいて優れていなくとも、これらをもとに自分の立ち位置と強みに合わせた戦略を立てることで、より多くのチャンスを掴みやすくなります。具体的には、以下の表を参考にしてみてください。
学力高・評定高 | 学力高・評定低 | 学力低・評定高 | 学力低・評定低 | |
活動多 英語スコア高 |
① | ⑤ | ⑨ | ⑬ |
活動少 英語スコア低 |
② | ⑥ | ⑩ | ⑭ |
活動少 英語スコア高 |
③ | ⑦ | ⑪ | ⑮ |
活動少 英語スコア低 |
④ | ⑧ | ⑫ | ⑯ |
各指標の組み合わせ別解説
①~⑧タイプ:一般選抜を中心に、推薦選抜(=総合型選抜・学校推薦型選抜)は20%の力で
学力の高い①~⑧タイプの受験生は、一般選抜80%、推薦選抜20%程度の比重で対策をするとよいでしょう。また、ほぼ確実に合格を狙える指定校推薦も視野に入れて戦略を立てることもできます。
勉強、学校生活、課外活動、すべてにフルコミットした①②タイプ
学校の評定が高く、活動実績もある①②タイプの人は、総合型選抜・学校推薦型選抜、どちらも狙いやすい立ち位置です。受験勉強と自主的な活動、さらに学校の成績を維持する体力があれば、総合型選抜・学校推薦型選抜の両方を狙えるかもしれません。
ただし、主軸を見失ってしまうと、頑張りすぎて燃え尽きてしまう恐れもあります。推薦選抜は「余力でチャンスを増やす」程度の心構えで臨むと良いでしょう。
勉強、試験ともに力を入れ、コツコツ成績を積み重ねた③④タイプ
「特に課外活動などに力を入れてこなかったが、学校の成績はしっかり成果を残してきた」という③④タイプの人は、学校での生活態度や成績が重視される学校推薦型選抜に向いていると言えます。志望校が総合型選抜のみを実施してる場合は、学校生活内で努力して取り組んできたことや継続してきたことをアピールできるとよいでしょう。
勉強に励み、興味・関心に情熱を注いだ⑤⑥⑦タイプ
「学校の成績はもう一歩だが、これまで続けてきたことがある」「大学に進学する明確な目標がある」という⑤⑥タイプの人は、大学とのマッチングや、受験生の興味関心、将来の方向性が重視される総合型選抜がオススメです。
また、評定が高くなくとも、英語を含め高い語学力スコアを持つ⑦タイプの受験生も、学校推薦型選抜よりも総合型選抜のほうが適しているケースが多いと言えます。
学力に突き抜けた⑧タイプ
⑧タイプの人は、一般選抜のみを狙って準備をしても十分に戦うことができるはずです。もちろん、新たに課外活動を始めたり、英語資格試験・検定に取り組んだりといった方向転換も可能ですが、これから新たに始めたいことなどが特にない場合、一般選抜に全力を注ぐと良いでしょう。
⑨~⑮タイプ:推薦選抜(=総合型選抜・学校推薦型選抜)に主軸を置きつつ、究める分野を見極める
学力に自信がなくとも、自主的な活動などの積み重ねに力を入れてきた人は、総合型選抜を検討してみるとよいでしょう。また、「学校の勉強はしっかりやってきた」という受験生は、学校推薦型選抜がおすすめです。あくまでも目安ではありますが、⑨~⑭タイプのなかでも「なるべく一般選抜は回避したい」と考えている人は、推薦選抜80%、一般選抜20%の比重で受験準備を進めるとよいでしょう。
学校の成績を積み上げ、課外活動にも精を出した⑨⑩タイプ
成績が上位かつ課外活動にも積極的に取り組んできた⑨⑩タイプの人は、総合型選抜、学校推薦型選抜、どちらも選択肢として考えられます。自身の志望校を複数選び、それらの学校がどのような試験を実施しているかを調べたうえで、条件に合う試験を探してみましょう。
成績維持や、外国語資格・検定試験に力を注いだ⑪⑫タイプ
学校の成績の維持と向上に努めてきた⑪⑫タイプの人は、学校推薦型選抜がおすすめです。また、外国語資格・検定試験で一定レベル以上のスコアを持っている人は、さらに選択肢の幅が広がります。一定以上の成績を保持している人は、資格・検定試験の受験も検討してもよいかもしれません。
ライフワークや課外活動に突き抜けた⑬⑭タイプ
勉強以外に熱中していることがある人や、長く続けてきたことがある人で、大学入学後もその活動を自分の軸にしたいと考えている人は、総合型選抜がおすすめです。多くの大学が各大学のアドミッションポリシーのもとにさまざまなかたちで総合型選抜を実施しています。「自身のこれまでと強みを活かす」という観点から大学や入試を探してみるとよいでしょう。
外国語資格試験・検定に力を入れた⑮タイプ
英語を含む外国語に力を入れ、外部試験・検定でスコアを取っている人は、総合型選抜を狙えるだけでなく、一般入試でも語学科目を武器に戦うことができます。受験準備ではボトルネックとなっている科目の対策を手厚くし、同時並行で、自分のスキルが十分に活かせる大学・学部を探してみましょう。
これから伸びしろを見つけたい⑯タイプ
残り時間との兼ね合いを見ながら、自分が最も伸ばせそうな分野を焦らず探してみましょう。探しながらも、基本的には一般入試を受験することを想定して必要な準備を積み上げていけば、たとえ推薦選抜でチャレンジに失敗したとしても「八方塞がり」は回避できます。
具体的な受験戦略モデル
以下は、それぞれの試験に表記の比重をかけて受験準備を行う際のモデルケースです。もちろん、受験準備は一人ひとり最適解が異なるため、状況や志望校に合わせて自分にとって最もよい受験スタイルを模索してみましょう。
一般選抜80%、総合型選抜・学校推薦型選抜20%の比重で準備をする場合
- 夏から秋にかけて、志望度の高い大学・学部をひとつ押さえておく。
- 総合型選抜もしくは学校推薦型選抜で一校押さえたら、残り時間は一般入試にすべてかける。
- 学校推薦型選抜を狙う人は、指定校推薦も検討してみる。
目安スケジュール
一般選抜50%、総合型選抜・学校推薦型選抜50%の比重で準備をする場合
- 「ここに受かったら受験は終了」というラインを引き、総合型選抜(と、場合によっては学校推薦型選抜)を複数受験する。
- 継続してきた活動の実績や英語資格試験のスコアなど、持っている「武器」を最大限活用できるフィールドを探す。
目安スケジュール
一般選抜20%、総合型選抜・学校推薦型選抜80%の比重で準備をする場合
- 総合型選抜・学校推薦型選抜は、安全圏校からチャレンジ校までバランスよく受験する。
- 継続してきた活動の見せ方に時間をかける。
- 英語資格試験のスコア取得など、新たな目標を立てることも視野に入れる。
目安スケジュール
おわりに
冒頭でも述べた通り、一般選抜と総合型選抜・学校推薦型選抜の両立は、今後さらにメジャーな受験の選択肢となっていくと考えられます。現在高校1年生、2年生の人は、両方の試験を受験計画に組み込むことを前提に、早いうちから準備を始めるとよいでしょう。
既に高校3年生の人の中には、「総合型選抜や学校推薦型選抜に興味はあるけれど、自分は目立った実績や活動が何もない」と考える人もいるかもしれません。しかし、今から何らかを積み重ね始めれば、数ヵ月後には必ず今とは違う立ち位置へと上っていくことができるはずです。また、「自分には何もない」と最初から諦めるのではなく、これまで過ごしてきた学校生活を改めて捉えなおすことで、実は実績として書けるものが見つかることもあります。
活動実績の書き方や見つけ方などは、以下の記事も参考にしてみてください。
総合型選抜(旧AO入試)・学校推薦型選抜に向けた活動実績の準備ポイント
【慶應法FIT入試】自己推薦書と志望理由書の書き方
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