第97回:地球環境技術論(その3)

未分類

 温暖化の主な原因として、「二酸化炭素」が挙げられることが多い。本講義の中では、そうした二酸化炭素を回収・貯留するための技術について、(財)地球環境産業技術研究機構から研究員の方を招き、特別講義が行われた。

 二酸化炭素の排出源としては、火力発電所、セメント工場、製鉄高炉、石油化学施設などが挙げられる。こうした各施設において、二酸化炭素を分離回収する技術が導入されている。「科学吸収法による分離」「膜分離」「深冷分離」という3つの方法があり、それぞれ分離した後、地中貯留や海洋隔離へと進む。

 また、二酸化炭素には「地中貯留ポテンシャル」という考え方がある。油田やガス田には9,000億トンの二酸化炭素が眠っていると言われている。2006年度の世界の二酸化炭素年間排出量は292億トンであることから、このポテンシャルは31年分に相当する。同様に、採掘をやめた炭層には7年分、地下深部塩水層には342年分があるとされる。これらはいずれも、地球環境の将来を考える際に無視できない量である。

 近年は、地中貯留が見直されている。二酸化炭素回収を大規模に行うことができ、貯留能力は世界中で少なくとも約2兆トンあると推定される。また、地中に入れた二酸化炭素の99%以上が、1000年間貯留できる可能性が高いと言われている。費用的な問題を乗り越えることができれば、一気に普及していくだろう。

 その他にも、国内外の事例が多く取り上げられ、写真や図などによってわかりやすく説明された。特に、日本CCS調査株式会社の設立、革新的ゼロエミッション石炭火力発電プロジェクトなど、最先端の取り組みについても詳しいお話を伺うことができた。しかし、二酸化炭素に関する問題は地球規模で向き合わなければならない。そのためには国際協力、産官学の連携の強化が求められていると同時に、今後さらに注目が高まるであろう「環境ビジネス」についても、さらに議論を深めていく必要がある。

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷 晃毅