第98回:地球環境技術論(その4)

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 今回は、「エネルギー」について。

 「ドミナントテクノロジー」という言葉をご存知だろうか。一つの社会、一つの時代で、一つの目的を持った技術は一つしか生き残れないとされている。過渡期には複数の技術が存在するが、コスト競争力などの理由から、やがて一つに収束する、というものだ。

 自然エネルギーについても、このドミナントテクノロジーの法則が当てはまる。バイオ、風力、水力など、現代ではさまざまな発電方法が考案・使用されているが、現実性や資源制約などの側面をすべて考慮すると、これから先も生き残る最も有力な技術は、実は「太陽電池」なのである。

 我々の生活に必要な電力を太陽電池でまかなうためには、約11兆円という金額が必要とされる。またこの電力を得るのに必要な面積は、地球面積の1.5%(地球上の陸地面積は約30%)、これはアメリカの面積の20%に当たる。地球全体の1.5%の面積に太陽電池を貼るというのは、非常に大規模な事業となる。しかし地球全体に普及することによって、全世界が十分なエネルギーを使うことができるようになるのだ。

 太陽電池は、近い将来急速に安くなり、大量普及に至るだろう。ただし、夜間や雨の日には使えないという問題がある。これらの問題を解決する為には、エネルギーの「貯め方」についても考えなければならない。

 そこで登場するのが、リチウムイオン電池。太陽電池で作った電力をリチウムイオン電池に蓄電し、動力や照明、熱利用、電気自動車などの用途に使い分ける。また電気分解によって、製鉄業などに用いることも可能だ。十分安価でメンテナンスフリーなため、太陽電池の普及とともに、今後さらに需要が高まっていくだろう。

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷 晃毅