第100回:地球環境技術論(その6)

未分類

 今回は、「省エネ機器」について。

 省エネに対する関心・意識が社会的にも高まる中で、企業の工場や大規模施設だけでなく、私たちの家庭にもそうした技術の導入が進んでいる。家庭での省エネには3つの方向性がある。高断熱・高気密などの「建築物」、太陽電池や風力・太陽熱給湯などの「エネルギー」、そして「家電製品」だ。

 家電製品の省エネ化というと、まず思い浮かぶのは「IHヒーター」だろう。ガスによる火力加熱ではなく、「電磁誘導」の原理で加熱する。コイルに高周波を流すと金属に電磁誘導が起こり、金属中を電流が流れる(渦電流)。この電流が、金属の電気抵抗で熱になる。直接暖めるためエネルギー効率が高く、同時に安全性も高くなる。

 また、「エコ給湯」という言葉もよく耳にするようになった。ヒートポンプ(電力等の動力を使って熱を移動させる機械。エアコンや冷蔵庫に使われている)や夜間電力によってお湯を沸かすというものだが、このふたつをうまく併用することで、二酸化炭素の発生を抑えることができる。同じ天然ガスを原料としていても、直接燃焼の効率が80%であるのに対し、発電・送電・ヒートポンプという一連の流れによる効率は254%となる。

 ニュース等では省エネ「製品」の方が多く取り上げられ注目を集めるが、実際にはそこに使用されている「部品」レベルでの省エネ化が大きい。熱利用の省エネ化を実現した「ヒートポンプ」以外にも、電力制御を容易にした「インバーター」や、モーター利用機器の効率を高めた「永久磁石モーター」といった技術も存在する。これらの技術が家庭に入ったことで、冷蔵庫や洗濯機、食洗機など、私たちの生活にとって身近な「家電製品の省エネ化」が進んだ。それが結果的に、私たち省エネに対する意識をさらに高めるという、好循環を生み出しているのである。

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷 晃毅