第103回:ネットワーク社会の構築(その2)

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 今回は、「ネットワークの外部性」について。

 現代社会の市場構造について考える上で、重要な概念が三つある。「規模の経済性(economies of scale)」、「範囲の経済性(economies of scope)」、そして「ネットワーク外部性(network externality)」だ。

 規模の経済性とは、大きな固定設備で同一のものを大量生産・販売すること。より沢山作ることにより、平均コストを下げる。20世紀産業の特徴を表す典型的な概念だ。一方、範囲の経済性とは大きな固定設備で「多様な」製品・サービスを生産販売する。よりバラエティにとんだ製品ラインナップを用意することで、こちらもコストを下げることになる。

 授業で多くの時間を割いて説明されたのが、三つ目のネットワーク外部性。利用者が増えるほど、価値が高まる現象のこと。

 たとえば、一人ではつながりは「0」だが、二人いれば「1」になる。これが三人になると組み合わせの原理で「3」に、四人であれば「6」になる。数学的に表すと、「n人いれば、そのつながりはn×(n−1)/2」になるのである。メンバーが増えるほど、価値が一気に増大するのがわかる。

ポイントは、「単なる足し算ではない」という点。

 「三人寄れば文殊の知恵」という有名なことわざがある。ここでは「文殊」という言葉で表してるが、「三人=三人分の知恵」ではなく、三人分以上の力になるという意味だ。

 つながりはネットワーク上の創発現象を生み出す。多様な主体の相互作用の中から、予想もしなかった新しい現象が生まれる。各大手企業が積極的に社内SNSサイトやブログを利用しているのも、そうしたつながりの中から新しいビジネスが生まれる可能性が大いにあるからだろう。

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷 晃毅