第108回:マーケティング戦略(その4)

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マーケティング戦略(その4)

今回は、「生理学的アプローチ」について。

人は皆、「好き」という感情を持っている。その対象は音楽やスポーツ、人や味など、さまざまだ。そして人が何かを選ぶとき、その人自身にとって「好き」なものであるということが、大前提として挙げられる。

センセーション・シーキング(SS)という言葉をご存知だろうか。何か変わった、新しい、そして複雑な感覚や経験を求める性質のことで、そのためには身体的あるいは社会的リスクさえも負う、という考え方である。SSにはいくつかの種類があり、スリルや冒険を求める傾向(TAS: Thrill and Adventure Seeking)や、経験を求める傾向(ES: Experience Seeking)などがある。一般的に、若い人、男の人ほどSSが高い。

またSSが高い人には、外向型、実験・諸活動への参加が多く、感覚遮断が苦手、運転時にはスピードを好み、ギャンブルの際には高いオッズを好むなど、共通の傾向が見られる。また、スキューバダイビングやパラシュート等、危険と思われがちなスポーツに対しても好印象を持ちやすかったり、習慣的な飲酒が多かったりもする。

これらの分析は、消費行動とも結びつけることが可能だ。たとえば、SSが高い人ほど乗用車を購入することに対して積極的であったり、ピアノや電子オルガンの所有率が高かったりする。そうしたデータをもとに、マーケティング戦略を練るのである。

消費の最大の目的は、自分にとって良い状態、すなわち「快」の実現と維持である。快・不快は感情情緒の基本的次元であり、Meta Motivationとも言われる。生理的な欲求にいかに訴えかけるかということも、マーケティングの重要なポイントなのだ。

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷 晃毅