第117回:国際法(その2)

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 今回は、「国際法の法源」について。
1945年に制定された国際司法裁判所の規定第38条には、「裁判の基準」として次のように書かれている。

 『裁判所は付託される紛争を国際法に従って裁判することを任務とし、次のものを適用する
a.国際条約
b.国際慣習法
c.法の一般原則
d.法則決定の補助手段として裁判上の判決及び諸国の最も優秀な国際法学者の学説。但し、第59条の規定に従うことを条件とする。』

 そもそも条約とは、国家間の要件・効果を示した合意(文書、口頭)のことを指す。ここでいう「国家間」という言葉は、国家と国際組織、国際組織と国際組織も含む。

 ポイントとなるのは、まず名称は関係しないという点。特に英語名称においては、treaty, convention, agreement, charter, statute, covenant, protocol, declaration, exchange of notes, arrangement, constitutionなど、さまざまな表現をされることが多い。条約の名称自体が効果に影響を与えることはない。

 次に、口頭の条約も存在するという点。条約の本質は、紙や会話に存在する「合意」であり、2つ以上の国際法主体の意思の合致である。たとえば、1933年の常設国際司法裁判所(PCIJ)東グリーンランド事件判決の際、デンマーク公使の要求にノルウェー外相が「ノルウェー政府はこの問題の処理になんらの障害ももたらさないであろう」と声明した口頭の約束は、二国間条約の性質を持つとされた。国際社会においてそれなりの権力を持つ人物の間での「口約束」は、条約として十分機能するのである。

 では、条約はどのようにして作られ締結されるのだろうか。

 おおまかな流れとしては、たとえば国際法委員会(ILC)等が草案を作る。それをもとに外交交渉が行われ、その後条約の採択が行われる。

 最近の傾向としては、「コンセンサス方式」が適用される場合が多い。これは、会議などの決定に際し、票決によらず、反対意思の表明がないことをもって決定・成立とする議決方式である。

 では、そうしたプロセスを経てできあがった条約の効力は、どれほどのものなのか。

(次回に続く)

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷晃毅