第118回:国際法(その3)

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 条約の効力についても、条文の中に定められている。
「合意は守らなければならない」「条約の不履行の正当化に国内法を用いてはならない」とある通り、約束事である以上国際法は守るというのが大前提。問題となるのは、条約同士の抵触である。日夜多くの条約が締結される中で、「特別法は一般法に優先する」という原則が存在する。有事の際に緊急で結ばれたものの方が優先度が高く、一般法よりも強いと見なすのである。そしてもうひとつ、「後法は前法を改廃する」という原則もある。新しく結ばれたものが、以前結ばれた条約の効果をなくすなど、影響を与えるケースもあるようだ。

 では、直接条約を結んだ国以外の「第三国」とっての効力はどうなのだろうか。
一般原則としては、「合意は第三国を害しも益しもしない」と言われている。特定の第三国が影響を受けないよう、配慮しなければならない。(しかし実際の国際社会は、そううまくはいかないようだ。※第三国が利益を得た例:スエズ運河条約、パナマ運河条約、パリ議定書など。)
第三国に義務を課す場合、第三国の書面による明示の同意が必要。だが第三国に権利を付与する場合、「黙示の同意」を条件とする同意必要説と、「同意しない旨の意思表示がなされないかぎり同意として推定」される不要説の2種類に分けられる。ただしいずれの場合も、義務を課すときほどの厳格さは要求されない。

 条約の効力は、その条約の終了に伴い消滅する。しかしこれにもいくつかのケースがあり、一時的な「運用停止」から、合意による「条約終了」、条約の「死文化(廃絶)」など相互の合意による終了もあれば、重大な条約違反や事情の根本的変化があった場合など、合意によらない終了もある。こういった事態への対策のひとつとして、条約発効から一定期間後に改正についての会議が開かれるよう、あらかじめ条約の中に「再検討会議」の存在を規定しておくものもある。(例:核不拡散条約、南極条約など)

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷晃毅