第128回:近代思想の世界(その3)

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 今回は「フェミニズム」について。

 歴史上、フェミニズムに関する議論は何度も繰り返されて来た。19世紀末01940年代にかけての「第一波フェミニズム」では、参政権や法的差別、女性の社会進出や母性保護など、公領域での明確な差別を問題化した。続く1960年代からの「第二波フェミニズム」では、「私的なことは政治的」というスローガンのもと、性別意識や性役割などを問題化した。

 一般的に、社会が近代化すると「主婦化」が進むと言われている。「男が仕事」「女が家事」と言われたり、有償労働と無償労働ができることにより、「家事」が無償労働となって地位が下がったりする。「専業主婦」と「企業戦士」のペアは、24時間働ける労働者ができる、資本主義にとって合理的な家族形態となり、「日本女性は戦後に主婦化」したことを示す統計もある。

 一方で、女性の雇用形態も問題となっている。特に「嫁入り前の若い女性」や「子育てを終えた主婦」などは、最低賃金の少なく首が切りやすい短期労働力として見なされ、「M字型就労」という現象の原因となってしまっている。男女格差指数も、2010年は世界94位となっており、均等法施行後も格差は依然として存在している。
(ちなみに、法律用語としてよく「ジェンダー」という言葉が用いられる。”sex”が「生物学的な性」を表すのに対し、”gender”は「社会的に構築された性」を指す。)

 高齢化と労働人口の減少の中で、女性労働力をいかに有効利用するか。世界規模で条約が批准されるなど、時代の流れも変わって来ている。

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷 晃毅