第130回:研究開発と組織(その2)

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 まず、「組織」とは何か。この問いに対しては、歴代の多くの有識者たちがそれぞれ答えを出している。例えば、最近「もしドラ」という本によって一般の人にも広く知られるようになったピーター・F・ドラッカーは、組織の要件として、「その組織に特有の目的と使命を遂行すること」「仕事の生産性を上げ、働く人間をして達成させること」「社会的インパクトを処理し、社会的責任を遂行すること」を挙げている。

 「企業」も、組織の代表例のひとつだ。企業の場合、唯一の目的は顧客を創造すること。「企業とは何か」を決めるのは、企業自身ではなく顧客である。企業の目的としては「利潤」が挙げられがちだが、利潤は目的ではなく制約条件。ただしもちろん、経済的機能を果たすためには業績を上げることが必要不可欠である。

 ドラッカーの言葉にもあるように、企業にも社会的な責任が生じる。消費者に対し、財とサービスを提供するために、企業は存在しているのである。言い換えれば、企業は労働者や経営管理者に仕事を与えたり、株主に配当を与えたりするために存在するのではない。

 それでは、本授業で扱う「経営戦略」とは何か。「長期的な目標の設定、行動指針の採用、目標達成に必要な資源配分(byチャンドラー)」「経営理念を実現するためにデザインされた環境との関わりに関する長期的な基本設計図(慶應BS山根教授)」というように、さまざまな定義が存在する。その中でも「的を知り己を知らば百戦危うからず(孫氏の兵法)」という言葉は、経営戦略の核を捉えているように思う。ここでいう敵とは、消費者・競争者・取り巻く環境などを指す。そしてこれらは常に「不確実性」を伴っており、それにどう対応していくかが、企業活動および経営戦略の重要なテーマと言えるだろう。

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷 晃毅