第132回:研究開発と組織(その4)

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 M&Aという言葉を聞いたことがあるだろうか。「Mergers & Acquisitions(合併と吸収)」の略であり、近年多くの企業がこのM&Aを行っている。財閥で言えば、三菱と三和が「三菱UFJファイナンシャルグループ」に、住友と三井が「三井住友ファイナンシャルグループ」になった。保険業界においても、三井海上と住友海上が「三井住友海上」に、安田火災と日産火災が「損保ジャパン」になっている。また、業界自体が寡占化され、二大陣営へと統合されるケースもある。スーパーでは「セブン&アイ・ホールディングス」と「イオングループ」、鉄鋼では「JFEホールディングス」と「新日鉄」だ。

 なぜこのような業界再編やアライアンスが進むのだろうか。その背景には、様々な要因が存在する。提携によって市場寡占化し、新ビジネスモデルを模索することができる。生き残りを賭け、合併により規模の拡大、シェアの向上、より効率的な企業運営を行うわけだ。また、時価総額の向上も見込める。経営の効率化への努力を行っているという姿勢を示すことで、株価アップに繋がるのだ。

 ここ2~3年の傾向として、日本企業から海外企業へのM&A、技術資本提携など、国境を越えたグローバル連携が急増している。提携方式にもいくつかの種類があり、サプライチェーンにも当然変化が見られる。たとえば、サムスンとソニー、パナソニックと東芝のような「合弁生産」という方式では、人や技術など相互の強みを生かすことが可能となる一方で、技術流出の恐れがあるなど、利点と欠点の両方が生じるのである。

 ちなみに、買収の際によく耳にする言葉のひとつに、「時価総額」というものがある。2010年の日本企業時価総額ランキングでは、1位がトヨタで98,302億円、2位がNTTドコモで59,335億円だ。トヨタの企業としての強さがお分かりいただけるだろう。

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷 晃毅