第134回:研究開発と組織(その6)
今回は、「ベンチャーマーケティング」について。
「ベンチャー」という言葉はよく耳にするが、その定義は曖昧な部分が多い。「設立15年未満」「急成長」など独自の基準を設けている団体もあるが、一般的には「少人数」で「社会をよりよい方向に変革しようとする志がある」という点も挙げられる。ベンチャーという言葉の語源は「venture」であり、「冒険、冒険的な企て」といった意味があるので、事業内容においてもそうした新しい市場や技術開発への取り組みが含まれるのではないだろうか。
しかしベンチャー企業の中には、技術にばかり目が行く経営者が多い。ワークスアプリケーションズの牧野代表取締役が「売ることを軽く見ているベンチャーが多すぎる」と言っていたように、特に市場の変化が激しい21世紀においては、マーケティングが事業活動の鍵となる。
市場は、大きく5つのグループに分けられる。新しいもの好きなごく少数の集まりである「Technology Enthusiasts」、その次に反応するのが「Early Adopters」、大部分の人が属する「Early Majority」と「Late Majority」、そしてなかなか買わない「Laggards」だ。身近な例を挙げるとすれば、日本人なら多くの人が利用しているソーシャルネットワークサービス「mixi」は、「Late Majority」にあたる。つまり今後は、なかなか利用しようとしない「Laggards」層の人をどう獲得していくかが課題となる。
しかし現実としてこの市場区分のうち、「Early Adopters」と「Early Majority」の間には「カズム」と呼ばれる溝が存在する。これを越えることがベンチャー企業にとって最初の難関となるわけだ。この二つの差は、「ビジョナリー」と「現実主義者」と言うこともできる。他が買わなくても受け入れる、はじめての会社からでも買うという「ビジョナリー」に対し、「現実主義者」は様子を見がちである。つまり自社製品がオンリーワンであると主張すると、その時点で現実主義者たちは「比較対象がない」と言って検討をやめてしまうのだ。この顧客層の違いを認識しておくことが、新製品のマーケティングにおいては特に重要になるだろう。