第136回:経営統計データベース(その1)

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企業の財務諸表データは企業の経営分析に欠かすことのできない情報である。 本講義では「実際の企業の財務データを利用した実証分析」を実習形式で行い、より実践的な経営分析手法の習得を目指す。 企業財務データ公開の意義、財務諸表の見方、各財務指標といった企業財務評価における基礎知識をはじめとして、分析に必要なデータを収集・処理するための手法を日経NEEDSの企業財務・経済データを扱いながら習得した後、表計算ソフト(エクセル)を用いて各企業の財務データに基づいた経営分析、企業評価の方法を実習形式で習得する。(以上、シラバスより)

企業の経営に関心がある人だけでなく、自分の興味分野の研究においてエクセルを使いたいと考えている人にも、この授業をおすすめしたい。個人的な実感として、ワードを自由自在に使いこなせる人はよくいるが、エクセルを使いこなせる人はそう多くない。しかし一方で、私のまわりにいる社会人の先輩方の多くが「エクセルは使えた方がいい」と口を揃える。パワーポイント等の資料を作るのにも、データの集計をするのにも、エクセルは非常に便利なツールであるからだ。

授業では、実際の財務諸表データを用いて演習を行う。普段の生活で商品に触れることはあっても、企業の経営状態まで考えることはそうないだろう。しかし、そのデータからは非常に多くのことが見て取れる。そうした新たな視点は、就職活動の際に企業や業界を見る上でも大いに役立つのだ。

ひとつひとつの手順がスライドに表示され、一緒に手を動かしながらの授業となる。そのため、エクセルの使い方自体にあまり慣れていないという人でも大丈夫。メールによるフォローアップも受けられるため、着実にスキルを身につけることができるはずだ。
次回以降、より具体的な内容を紹介する。

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷 晃毅

第136回:経営統計データベース(その2)

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そもそも「経営分析」とは何か。経営分析とは、一言で言えば「企業の財政状態および経営成績の良否を明らかにすること」である。企業の収益性・安全性・成長性・効率性をはかる指標となり、企業の経済活動にかかわるすべての人(経営者、債権者、株主、税務署、財務省、取引先、従業員、シューカツ生など)にとって、有益な情報となるのである。

この授業では、各企業の財務諸表をもとに分析を行った。財務諸表と一口に言っても、上場企業が決算発表時に作成する「決算短信」、金融商品取引法規定の開示資料である「有価証券報告書」、主に海外の株主・投資家向けの「アニュアルレポート」、会社法規定の財務情報を開示する「決算広告」など、いくつかのフォーマットがある。こうした情報は、EDINETという電子開示システム、各企業のホームページ(「投資家情報」や「IR情報」といったページにあることが多い)、日経NEEDSなどの各種データベースサービスから入手することが可能だ。

さて、決算書を見る際にいくつか注意しなければならないことがある。財務諸表には、「個別財務諸表」と「連結財務諸表」という二種類が存在し、前者は単一企業について作成するもの、後者は子会社を含む企業グループをひとつの組織とみなして親会社が作成するものである。新聞などの見出しでも「単独決算」「連結決算」といった文字を目にすることがあるだろう。たとえばNTTドコモは「日本電信電話」という企業の子会社であり、ヤフーは「ソフトバンク」の子会社だ。一般的によく知られた大企業でも、実際は「子会社」であることが少なくない。こうした点にも着目しながら財務諸表を見ることが必要である。

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷 晃毅