第140回:知識産業マネジメント(その2)

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「知識産業」は、形の無い知識により対価を得る企業活動だ。より具体的に述べると、特定の顧客が必要とする知識を生産し、伝達することによって対価を得る。つまり、知識産業は本質的にサービスとしての性格を持つ「知識サービス産業」と言える。

まず「産業としての知識サービス」のあり方を考えてみる。産業ではない知識サービスといえば、「研究」である。問題は主として研究者が形成し、時間の尺度も通常は弾力的。情報も一般に開放され、成果に対する評価は外部(科学界の同業者たち、政策立案者たち…etc)によって行われる。それに対し、産業としての知識サービスとして有名なのが「コンサルティング」。問題は主としてクライアントまたは共同で形成し、時間の尺度は厳密。情報は往々にして社外秘となり、評価も内部(会社)によって行われる。世間的に「コンサルティング」の定義が曖昧なのも、産業としての性格によるところが大きい。

産業である以上、そのマネジメントを行う上では「品質管理」や「マーケティング」といったことも考える必要がある。知識産業においては人材およびサービスの品質だけでなく、顧客の満足や囲い込み、最終的な財務的業績まで、総合的に管理しなければならない。そのため、「バランススコアカード」などの手法がよく用いられる。また案件を募るための営業活動も存在し、「顔を売るマーケティング」と言われるような、積極的な情報発信を行う。よくコンサルタントが本を出版したり雑誌に寄稿したりしているのは、この営業活動としての側面もあるのだ。

他にも、知識産業の価値や給与体系など、普段はなかなか知ることのできない裏話を数多く聞くことができた。

更新:2011/05/14
慶應義塾大学 環境情報学部 水谷 晃毅