第48回:スポーツビジネス(その2)

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 今回は授業内容の例として、「日米スポーツマネジメント」の回について紹介する。

 講師として、現在プロ野球のオリックスバッファローズでアドバイザーを務めているアメリカ人の方を招いて授業が行われた。アメリカといえば、スポーツマネジメントの先進国。メジャーリーグでの代理人制度なども有名だ。

 そもそも日米の野球界では、チーム運営の方法が違う。日本のプロ野球は、オリックスも含め各チームがグループ会社の子会社であり、連結決算によって成り立っている。それに対しメジャーリーグ(MLB)は、約30チームがパートナーシップを組んで運営しており、年間収益は約6,500億円にも上る。そのうち約2,000億円が、なんと「ライセンス収入」によるもの。「ライセンス収入」とは、簡単に言うと各チームが販売する帽子やユニフォームなどのグッズにプリントされる、MLBのロゴマークによる収入のこと。これによって、全体の約3分の1の収入を稼ぎ出しているのである。日本のプロ野球(NPB)にはライセンス収入がなく、これが日米の大きな違いであるらしい。

 その他の日本球界の特徴として、「ホーム総取り制」が挙げられる。観客入場料など、ホームが収益を総取りし、ビジターに対するシェアがない。アメリカでは、ホーム・ビジター・機構の3つでシェアする。また「生涯一球団」という伝統・慣例も、いかにも日本的な、ビジネスとしての成長を妨げている大きな要因のひとつだ。FAなどの制度はあっても、選手にとっては転職のチャンスが少ない。「転職」という選択肢は、選手にとって自分を売り込むことができる「権利」でもある。選手の権利が最大限に保障されてこそ、球界全体の発展に繋がるのだ。

 最近ではWBCもあり、日本の野球界に対して世界中から注目が集まっている。日本野球の評価が高まると同時に、アメリカへの優秀な選手の流出などが問題視されるようになった。しかし上で述べたことを踏まえると、日本の優秀な選手がアメリカに流れるのはいわば当然のことにも思える。なぜなら、現段階では日本よりもアメリカの方が明らかに高待遇・好条件だからだ。日本のスポーツ界もアメリカのように、もっとビジネスとしての視点を持ち、「企業が儲けて選手に還元する」という仕組みが求められている。選手のレベルを上げるだけでなく、経営者のレベルを上げることが必要なのだと思う。

 次回、もうひとつ別の授業内容を紹介しよう。

                     慶應義塾大学SFC 環境情報学部2年 水谷 晃毅