第49回:スポーツビジネス(その3)

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 前回に引き続き、授業内容に例を紹介する。今回は、「スポーツにおける放送と通信」の回について。

 そもそもスポーツ放送は、かの有名な「力道山」の試合中継が原点であるとされる。まだ人々にとってテレビがそれほど身近ではなかった時代において、力道山の試合は多くの国民を魅了した。そこから時代が経つにつれ、テレビが生活必需品となり、スポーツ放送の種類も多様化してきたわけである。

 ニュース番組やドラマ、バラエティ番組などに比べ、スポーツ中継は比較的安定した視聴率が期待できる、いわば「鉄板」的な存在らしい。たしかに、ドラマの平均視聴率が10%を切ってしまい話題になることがあるのに対し、スポーツ中継で視聴率が低迷することはほとんどない。むしろ日本代表(サッカーW杯、野球WBCなど)の試合においては、たびたび驚異的な視聴率を記録してニュースとして取り上げられたりもするほどだ。

 さらに、スポーツ中継は「スポンサー受け」が良いらしい。視聴率20%のお笑いバラエティ番組でさえ、CMが売り切れないことがあるこのご時世に、スポーツ中継は軒並み売り切れ。メジャー競技には、その競技自体にスポンサー企業がついていたりする(サッカーでいうKIRINなど)ため、テレビ局側・番組制作側からしても、安定した広告収入を期待できる。

 そんな「鉄板」番組だからこそ、各局で取り合いになることもしばしば。日本代表の試合はもちろん、サッカー、駅伝、マラソンなどの競技は特に人気。あるいは、スター選手が存在する競技。たとえば、男子ゴルフの石川遼選手。それまでゴルフはあまり視聴率も伸びなかったが、彼の登場によって一躍「鉄板」番組になった。

 しかし、最近のスポーツ中継にはいくつか問題点もある。ひとつは、過剰な演出。少しでも視聴率を稼ごうと、選手に「リングネーム」のようなものを付けてみたり、余計な解説を入れてみたり。純粋に競技を楽しみたい視聴者にとっては、これらはあまり良いものではない。そしてもうひとつは、試合日程への影響。たとえば、2006年のサッカー・ドイツW杯において、日本代表の試合は日本のゴールデンタイムに合わせてキックオフするように、放送局・スポンサーが広告代理店を通してFIFAに働きかけたと言われている。たしかに私たち視聴者からすれば、観やすい時間帯に放送してくれるのはありがたいが、当の選手たちにとってやりにくい時間帯になってしまい、コンディションに悪影響があっては元も子もない。「中継」ならではの問題である。

                     慶應義塾大学SFC 環境情報学部2年 水谷 晃毅