第51回:デザイン言語(その2)

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 今回は授業内容の例として、グラナエル・ニコラ氏の講義内容について紹介する。

 グラナエル・ニコラ氏はフランス人のデザイナーで、日本のオフィス「curiosity」を拠点にしながら活動している。HPには彼が手掛けたプロダクトや建築物の写真が掲載されているが、その幅の広さに非常に驚いた。建築物ひとつ取っても、普通の一軒家からホテル、ショップに至るまで、さまざまなジャンルのものを手掛けていて、それぞれとても独特なコンセプトで作られている。どれも、実際に訪れてみたくなるものばかりだ。

 ニコラ氏の作品には、彼自身の「遊び心」がこれでもかと言うほど反映されている。それはコンセプトの段階からすでに明らかで、たとえば「MEILO HOTEL」。その名の通り、ホテル内部の作りが「迷路」のようになっているのである。意図的に回り道するようにしたり、階段を入り組ませてみたり、訪れた者が必ず迷うような設計になっている。彼いわく、このコンセプトは日本の伝統的な「旅館」からアイディアを得たそうだ。旅館は、入り口から客室までとても長い廊下があり、辿り着くまでに途中何度も曲がらなければならない。これは欧米のホテルとは全く正反対の特徴であり、フランス人のニコラ氏にとっては非常に興味深く思えたらしい。利用者にとってわかりやすい場所に作ったのは、唯一トイレだけだと言う。客室から廊下、レストランに至るまで、徹底した「迷路」になっている。

 最近の作品では、新宿に新たにオープンした「ユニクロ」の店舗がある。これについてはニュースなどでもかなり大々的に取り上げられたので、ご存知の方も多いだろう。コンセプトはずばり、「大きなコンビニ」。新宿というと、駅前は夜間でも非常に明るくにぎやかなイメージがあるが、エリアによってはとても暗い所もある。このユニクロ新宿店は、まさしくそんな暗いエリアに作られた。行き交う人々はその闇から抜け出そうとするかのごとく、自然と早足になってしまう。そこで考えられたのが、「コンビニ」というコンセプト。極端なほど明るく光らせることで、暗闇の中でも抜群の存在感を放ち、人々はその光に引き込まれるかのように店内へと入っていく。ただ見かけだけをデザインするのではなく、集客効果まで考えたデザインなのだ。

 そんなデザイナーの意図を体感するためにも、あえて真っ暗な夜に、訪れてみてほしい。

                     慶應義塾大学SFC 環境情報学部2年 水谷 晃毅