第52回:デザイン言語(その3)

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 今回は、「ミラノ・サローネ」日本担当コンサルタント天野忠夫氏の講演内容について。

 ミラノ・サローネは、毎年イタリアのミラノで開かれる世界最大のデザインの祭典(主に家具の見本市)である。2009年は、屋内では89の家具の展示会「サローネ・デル・モービレ」が、屋外では車の見本市「フォーリ・サローネ」など、様々なプロダクトのデザインが展示され、入場者数は約31万人という大盛況であった。

 イタリア、特にミラノには数多くのデザイン会社が存在する。私を含め多くの人が「イタリア」という国に対して、何となく「お洒落な国」というイメージを持っているだろう。イタリアのデザインの特徴として、「5秒で印象を与えるインパクト」があるらしい。たとえば、自動車のヘッドライトを照明家具として製品化し世界中に販売するなど、本来ではスクラップになってしまうものを瞬時に製品化して販売するというのが、イタリア人の得意分野であるらしい。国によってそのような「得意分野」があるらしく、イタリアは「インテリア」、イギリスは「音楽」、日本の場合は「ハイテクノロジー産業」が得意なのだと言う。

 このミラノ・サローネは、世界中の家具屋が商談を行う、ビジネスの場所でもある。日本の見本市のようにご挨拶だけのシステムではなく、実際にメーカーのプロデューサーや社長が訪れ、その場で商談・売買が行われる。世界中の一流デザイナーたちが一同に会する場所とあって、ビジネスとして効率の良い機会なのだろう。

 講演の中で、天野氏はいまのデザイン業界をイタリア・セリエAのサッカーチームに例えた。一昔前まではほとんどがイタリア人で構成されており、それが誇りでもあった。しかしいまや世界中から一流選手を獲得し、多国籍チームを作り上げている。「他に勝つためには様々な人材を」という考え方が、いまのデザイン業界に通じているらしい。

慶應義塾大学SFC 環境情報学部 水谷 晃毅