第55回:デザイン言語(その6)

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 今回は、good design company代表・水野学氏の講演内容について。

 皆さんは、「ラーメンズ」という芸人をご存知だろうか?私自身はこの授業で初めて知ったのだが、知っている人は知っている、そんなお笑いコンビである。実は、日本で一番観客動員数の多い(1公演43,000人)お笑いコントグループであり、DVD販売ランキングでも1位を獲得するなど、数々の記録を持っている。そして、この「ラーメンズ」というコンビのブランディングを、水野氏が担当しているのだ。

 お笑い芸人の「ブランディング」とは、一体何なのだろうか。極論してしまえば、「売れるようにする」ことである。もちろん、売れるためにもさまざまな手法が考えられるが、水野氏がラーメンズに対して提案したブランディングは、ずばり「テレビに一切出演しない」ということ。メディアには出ず、ひたすら舞台だけで活動する。これはラーメンズの二人自身の考え方でもあり、あえてそこを強調することにしたのだ。ファンであることがステータスになるような見え方を演出するため、お笑い自体はもちろん、舞台告知やグッズにもこだわった。「センスがいい」「レア感」など、ファンがファンであることを自慢できる、そんな「ブランド」にしたのである。実際この講義でも、ラーメンズを知らなかった私に対して、隣に座っていた友達が「ぇ、お前ラーメンズ知らないの!?」と勝ち誇ったように言ってきた。まさに水野氏の思惑通りである。

 水野氏いわく、これからの時代に強く生き残っていくのは、「デザインの力を信じている企業」であるらしい。客に対して売り込むキャンペーン型の企業は伸び悩み、客を惹きつけるブランド型の企業が成長していく。また、上で述べたお笑いコンビのように一見デザインが必要なさそうな分野においても、独自のブランドをデザインすることで他者との差別化に成功し、厳しい競争を勝ち抜くことができる。「ブランドは、最後のアウトプット」という水野氏の言葉が、まさにその通りだと思った。

                     慶應義塾大学SFC 環境情報学部 水谷 晃毅