第66回:リーダーシップ論(その4)

未分類

 今回は、「よそ者リーダーvs生え抜きリーダー」について。

 リーダーには2つのタイプがある。ひとつが「よそ者」タイプ、そしてもうひとつが「生え抜き」タイプである。

 私の好きなスポーツに例えると、例えばサッカー日本代表の監督は、いまでこそ日本人の岡田氏がやっているが、オシム氏、ジーコ氏、トルシエ氏など、近年は外国人の監督が指揮を執ることが多い。世界的な名選手・名監督が指揮を執ることによって、戦術的な面はもちろん、チーム全体の団結力・統率力も高まる。ヨーロッパのサッカーリーグでは、有名な監督目当てに有力選手が加入する、なんて話もあるくらいだ。

 企業の「よそ者」リーダーの代表例としては、まずIBMのガースナー氏が挙げられる。彼はいくつかの変革を行った。「ストックオプション」と呼ばれる、社員に自社の株式を購入する権利を与え、業績が上がるとその分の利益が自然に社員に還元される仕組みを作り、社員のモチベーション向上を図った。「勝利」「実行」「チーム」といった概念を徹底し、戦略に基づく競争優位ではなく、ダイナミックな学習プロセスを組織全体の体質として植えつけた。

 「よそ者」のメリットとしては、やはりその改革実行力にあると思う。しかしその反面、変革に力を注ぎすぎて企業文化をズタズタに壊してしまったり、企業がそのリーダーを過大評価してしまったりといったリスクも考えられる。

 一方、「生え抜き」リーダーの代表例は、松下電器産業の中村邦夫氏である。松下幸之助という、一人の「偉大なカリスマ」に依存していた状態からの脱却を図り、一人一人が主役という考え方のもと、事業部制や経理管理経営などを取り入れ、グローバルな連結経営を行った。海外支社のトップには現地の非日本人を採用するなど、「本当のグローバル化」にも取り組んだ。また、有名なヒーター回収CMにも見られるような「スーパー正直」と呼ばれる企業文化を作ることによって、信頼性を確立していった。

 「よそ者」か「生え抜き」か。どちらにもメリット・デメリットはある。企業がどちらを選ぶか、どんなリーダーを選ぶかによって、その企業の方向性が見えてくるのではないだろうか。

                     慶應義塾大学SFC 環境情報学部 水谷 晃毅