第68回:リーダーシップ論(その6)
今回は、「人材育成」について。
「リーダーを育成する」これは、さまざまな分野の組織が抱える永遠のテーマである。だが果たして、リーダーを育成することは本当に可能なのだろうか?
まず、リーダーに関する4つの「通説」と「現実」を挙げてみる。
(通説) (現実)
誰でもリーダーになれる >> やる気がなければなれない
リーダーは仕事で結果を出す >> いつも結果が出せるとは限らない。個人の結果とチームの結果は違う。
トップに登りつめるのがリーダーである >> 登りつめなくてもリーダーではある。
リーダーは優れたコーチである >> コーチングはそんなに簡単ではないし、別物である。
どうやら、本当のリーダーを育成することは容易いことではなさそうだ。しかし、一流企業の中にはそれぞれ工夫した手法で人材育成を行い、成果を収めているところもある。
例えば、IBM。「人材プール」という制度を採用し、力のある人材を適材適所に配置できるようになっている。さらに、社員全員が何かしらの「専門分野」を持ち、その道のエキスパートになるよう育てるという「プロフェッショナル制度」というものもある。実力主義の社会で生き抜くための「実力」を、会社が積極的に身につけさせる、海外企業らしい制度だ。
またHONDAの場合、「4割任用」という言葉がある。これは、「その仕事の4割を行うことができれば、その仕事を任せる」というもの。新しい仕事や慣れない業務内容だと、どうしても上司や先輩社員がつきっきりになり、ついつい手出しや口出しをしてしまう。たとえそれでプロジェクト自体がうまくいっても、下の者は成長しない。だが逆に全くの放任でも、やり方がわからず失敗してしまう。そこで、教わる分を踏まえての「4割」なのだ。そこから先を任せることによって、一人一人のリーダーシップやプロジェクト遂行能力を鍛えるのである。
このように、企業はそれぞれの手法で人材育成に取り組んでいる。しかし根本的な問題として、リーダーになる人材には、やはりリーダーになりうる「才能」も必要である。
その才能とは、以下の3つ。
「経験から学ぶことを、学ぶ能力」
「信頼」
「give and give」
takeしようとする人は、絶対的な信頼を得られない。リターンは常に相手の役に立てること。そうすれば、知らず知らずのうちに自分もtakeしているのである。
水谷 晃毅