第71回:宗教と現代社会(1)

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 SFCが第二外国語教育に力を入れているということはすでに何度も紹介してきたとおりだが、その中にはアラビア語も設置されている。教授やゼミに所属する学生たちの手によって作られた「自家製」のテキスト、また少人数によるフォローアップシステムなどを採用し、質の高い学習環境を提供している。おそらく外国語大学を除く他の大学では、アラビア語をしっかりと学ぶことができる環境というのは非常に珍しいのではないだろうか。

 しかし言語を学ぶ上で、同時にその地域の背景知識や文化理解といった要素も求められる。アラビア語がよく話される「イスラーム圏」と呼ばれる地域について学ぶのが、この「宗教と現代社会」という授業である。以下、シラバスより。

 『本授業は、イスラームの教えを軸に宗教と現代社会の問題を考えていく。先入観や偏見にとらわれない、イスラームに対する包括的な理解を深め、その教えの基本を念頭に おきながら、さまざまな角度から、宗教、社会、国家、民族、個人、経済、文化、思想、人権、戦争、科学、芸術などの問題を扱っていく。

 それは、グローバル化時代に生きるわれわれにとって、人類全体に向けられた教えとしてのイスラームの意義を探り、それを人類社会の未来に対して 積極的に生かしていく方途を探ることでもある。アラビア語の用語の紹介など行いながらも、決して専門的になりすぎないよう初学者を対象にすることを念頭に 置きながら、講義を進めていきたい。 』

 私たち日本人の多くは、「イスラーム」と聞くと何となく危ないイメージを抱いてしまうのではないだろうか。しかしそういったイメージの多くは、私たちの身の回りにあるメディアや文献などの影響から生まれた「先入観」なのである。特にグローバル化が進む現代において、多国籍な人々と関わり世界規模で物事を考える際には、いかに物事の本質を見極められるか、ということが重要なポイントになる。ただ言語を喋れるというだけでなく、その地域についての適切な理解も求められているのである。

 次回以降、授業の内容を詳しく紹介していこう。

                     慶應義塾大学SFC 環境情報学部 水谷 晃毅