第77回:情報法(2)

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 今回は、「Googleブック訴訟」について。

 「ブック検索」というものをご存知だろうか。全世界の図書をスキャンしてPDF化し、見出しをつける。それをデータベース化し、検索可能にするというもの。著作権の切れたものは全文を閲覧・ダウンロードすることができ、著作権が残っているものは該当箇所の検索結果が示され、オンラインで書籍を注文することができるのである。

 Googleでは、世界各国の図書館や出版社などと連携したブック検索サービス「Google Book Search」を展開している。それに対して、米国出版社協会などが2005年、Googleに対して集団訴訟を起こし、両者は2008年10月に和解。これが、「Googleブック訴訟」である。出展:(http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/02/25/22572.html/)

 この問題は、ブック検索が「著作権の侵害」に当たるのか、という点がポイントである。すなわち、数ページ程度内容を公開することによって、はたして書籍の売れ行きに影響が出るのか、ということである。結論を言ってしまうと、「実際には大した影響はない」という判断になり、和解成立(著作権者への保証金支払い、条項取り決めなどあり)となった。

 この訴訟によって、いくつかの制度や条約が注目を浴びた。ひとつが、「クラス・アクション(集団代表訴訟)」という制度。アメリカの法律特有の制度であり、共通の利害関係のある者(集合・class)全員を代表して訴訟を起こす、というもの。判決の効力は、全員に及ぶ。もうひとつは、「ベルヌ条約」。著作者の死後50年間は著作権が存在するというもので、すべての加盟国の間で相互に義務付けられる。

 私たち消費者からすれば、書籍や音楽をはじめ、様々なジャンルの作品を無料で閲覧・視聴できることは、大きな魅力である。しかしそのようなサービスが身近になるということは、著作権に関する問題もより身近になっていくということなのである。

                     慶應義塾大学SFC 環境情報学部 水谷 晃毅