第79回:情報法(4)

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 今回は、学期末に課された「最終課題」を紹介しようと思う。テーマは、「放送制度の将来」について。以下、私が執筆した論文である。

 まず、地上デジタル放送について。2011年7月の地上デジタル放送への完全移行まであと約2年となったが、総務省調査によると、2009年3月時点での対応TV・チューナーの世帯普及率は60.7%で、想定していたペースよりも遅れているのが現状である。景気後退の影響等から普及の勢いが鈍化しており、政府では各世帯への補助も含めた対策を検討している。また、全国約2,200万世帯のCATV加入世帯に対して、2011年の移行後3~5年間はデジタル放送を変換したアナログ放送を受信できるようにするという、実質的な期限延長ともいえる計画があるなど、完全移行に向けた課題はまだ多く残されている。

 地上デジタル放送のメリットとして、私たち一般国民の意見としては「映像がきれい」「テレビ番組表や天気情報など、さまざまなデータが受信できる」といったことが実感として挙げられる。少し専門的な話としては、ゴーストがなくなる。アナログ放送では、放送電波が視聴者に届くまでに雑音で映像音声が劣化する場合がある。デジタル放送では、ビルなどの高い建物に反射した影響で画像が乱れることがないため、高品質の映像・音声を楽しむことができるのである。しかしこれは一方で、デジタル放送のデメリットでもある。アナログ放送の場合は電波が微弱な状態でも、ノイズやゴースト混じりではあるがかろうじて受信することができる。しかしデジタル放送の場合、電波の強さがある一定の水準を下回ると全く受信できない。つまり、デジタル放送では鮮明で綺麗に受信できるか、全く受信できないかのどちらかになってしまう。経済的な面でも、地デジの受信環境を整えるには新たにアンテナを設置する必要があり、さらに地デジ対応テレビやデジタルチューナーを購入しなけれならない。アンテナの設置も業者に依頼するため費用がかかる。経済的に余裕のない家庭にとって、これら費用の負担は決して軽くはない。

 政府お墨付きの事業として進み、有名アイドルタレントのCM出演によって大々的にPRされている「地上デジタル放送」。放送の品質面では問題ないが、本当に全国に普及させ完全移行するためには、まだまだ課題がありそうだ。

(次回に続く)

※参考文献:
・Webサイト『地デジの学び舎』 (http://zideji.negoism.com/blog/)
・Webサイト『㈱富士キメラ総研』 (https://www.fcr.co.jp/)

                     慶應義塾大学SFC 環境情報学部 水谷 晃毅