第80回:情報法(5)

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 前回に引き続き、「放送制度の将来」について。

 次に、近頃話題になっている「視聴率の低下」について。主にテレビドラマにおいて、その人気を示すひとつの指標としてよく用いられる「視聴率」であるが、その水準が軒並み低下している。もちろん大きな原因は番組の内容そのものにあるのかもしれないが、視聴者が「他の番組を観ている」ために視聴率が低いのではなく、そもそも視聴者が「テレビを観ていない」ことが考えられる。いわゆる、「テレビ離れ」が深刻化する一方で、「You Tube」や「ニコニコ動画」といったサイトに投稿される動画の視聴数は軒並み増加している。CMを出す広告宣伝業界もこの兆候を踏まえ、You Tube上に広告を出すなどの新たな広告方法を取り始めている。

 また音楽業界においても、音楽CDの売り上げが減少する一方でPC・携帯電話向けの音楽配信サービス市場は拡大するなど、媒体そのものに変化が起きている。先日、ある人気歌手グループの楽曲が、「ダウンロード件数世界一」として、ギネスブックに登録されることになった。音楽は、いまや「買うもの」ではなく「ダウンロードするもの」なのである。

 地デジだなんだと言っていても、結局将来的には放送業界も「ダウンロードするもの」になってしまうのだろうか…。

 授業内で、IPマルチキャスト放送についても扱った。閉じられたIP網(専用回線)を通じて、映像コンテンツを多人数に対して一斉に提供するサービスであり、現在日本にはBBTV、MOVIE SPLASH、ひかりTVなどがある。様々な課題(電波法、放送法、電気通信事業法、有線テレビジョン放送法、著作権法など)はあるが、今後私たち視聴者が放送楽しむ際の手段として、ひとつの選択肢にはなりうると思う。ただその存在感を大きなものにするためには、英国のように新たな技術に柔軟に対応できる法制の整備が必要だ。

 テレビ離れが進む現状で、放送をより面白いものにするためには、より「競争」が求められていると私は思う。「地域限定のローカル放送の中でも面白いものを、全国に流す」という意見が授業中にも挙げられたが、私もこの意見に強く同意したい。どんな分野・業界においても、「地方の力」というのは非常に大きなものがある。たとえば、地方出身のタレントがそれぞれの地方で活躍して知名度を上げ、やがて全国進出して人気も全国規模になるというストーリーが、実際に起きている。大手百貨店の通称「デパ地下」でも、「北海道フェア」などの地域イベントを行っては、大盛況になっている。このように、地方の力を借りて成功する例は数多くある。放送業界でもぜひ取り入れるべきだろう。

(次回に続く)

慶應義塾大学SFC 環境情報学部2年 水谷晃毅