第81回:情報法(6)

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 前回に引き続き、「放送制度の将来」について。

 現時点で問題なのは、「キー局」と「ローカル局」という関係の構図である。キー局の番組が地方で流れることはあっても、ローカル局の番組が首都圏で流れることはあまりない。せいぜい、年に数回行われる「放送ハプニング集」のような番組で、地方のアナウンサーのハプニング映像が取り上げられるくらいだ。地方の番組内容が注目されるわけではない。

 地方にも面白い番組はきっとあるはずだ。仮に現在ないのであれば、つくるべきだ。ローカル局にそのような権限を与えることによって、全国の視聴者をターゲットにしなければならない全国ネットの番組とは一味違った、独創的な番組ができあがるだろう。深夜番組が次々にゴールデンに進出していく様子を見ていると、大衆受けする番組よりもマニア受けするような番組を求めている視聴者の数が、絶対に少なくないと私は思う。必ずしも法律の整備だけが「制度」ではない。ローカル局とキー局の「力関係」を変えることも、放送制度の抱える重要な課題のひとつだと思う。

 最後に、放送制度の将来に関するニュースをひとつ紹介しよう。

=====2009/4/1 文化通信.com
TFM、慶大放送将来像イベント協賛/黒坂氏「利用者本位のメディアに」

慶応大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)主催の映像イベント「FutureMotion2009」で、マルチメディア放送をはじめとする未来の放送の在り方を模索する、エフエム東京協賛のトークセッションが3月29日、同学日吉キャンパスで行われた。

 これは、KMDの学生が考案した、次世代放送のコンセプトアイデアを紹介しながら、新たな放送の形を考えていくという試み。冒頭挨拶に立ったTFM黒坂修常務は、本放送に向けて取り組んでいるマルチメディア放送について「テレビでもラジオでもない、利用者本位の新しいメディアを作る。そこで接触して下さる皆さんの生活を豊かにすることで、世の中に貢献したいと思っている」と意気込みを述べた。

 TFM仁平成彦マルチメディア放送事業本部副本部長は、今後の放送サービスの方向性として、リッチなコンテンツを良い環境で楽しむという「ゴージャス路線」と、生活密着型で利便性を追及した「コンビニ路線」に分かれると指摘。マルチメディア放送は後者に分類される。また、今後のメディアの重要なポイントとなる〝コミュニケーション〟の成功事例として、インターネットの掲示板などを活用した同局の人気番組「SCHOOL OF LOCK!」(月~金曜22時)を紹介した。

 これらを踏まえ、仁平氏は学生のプレゼンの前に、同局の目指すマルチメディア放送像として▽テレビとは違うパーソナルでプライベートなメディア▽コミュニケーションの場を提供し、リスナーとともに新たなライフスタイルの創造▽放送・通信の境界領域のサービス、といった例を提示。「今日発表いただいた色々なアイデアを、ぜひ福岡ユビキタス特区の場で実証実験し、本当に価値あるサービスを作り上げて、2011年以降のマルチメディア放送に参画していきたい」と語った。

 学生からは、携帯ゲームを活用したコミュニケーションや、特定のスポットをビジュアルで発見できるモバイルトラベルガイド、地下鉄車窓のメディア化、撮影した複数の写真を1枚の地図として作品化するサービス、家庭の中心にあるテーブルのメディア化など、自由な発想で様々な提案が出された。これらの中でも特に 仁平氏は、視覚、聴覚だけでなく触覚を利用し、擦る動作の「温かさ(温度)」で感情を伝える新デバイスの提案に強く関心。「心をつたえるというのは、メ ディア人として考えなければならない大事なこと。ぜひこういったものも考えていきたい」と感想を述べた。

(引用:文化通信.com(http://www.bunkatsushin.com/modules/bulletin/article.php?storyid=29070)=====

「ゴージャス路線」と「コンビニ路線」。はっきりとした差別化が求められるのだと思う。

※参考文献:
・Webサイト『文化通信.com』 (http://www.bunkatsushin.com/modules/bulletin/)

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷晃毅