第83回:企業の社会的責任(その2)

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 今回は、「コーポレート・ガバナンス」について。

 コーポレート・ガバナンスとは、「企業統治」のことである。企業全体をいかにコントロールするか。ここでいう「企業全体」は、社長も含める。つまり社長が何か間違いを犯したら、更迭することも十分ありうるという意味である。

 ガバナンスの失敗例として、「ダイエー」が挙げられる。「バイ・パワー」と呼ばれる、仕入れを全国規模で大量に行うことによって、低価格路線を実現していた。これにより、チェーンストア展開の基盤が作られた。しかしそこから、拙速な店舗拡大(すぐ近くに同様の店舗が存在)など、野放図な多角化が行われた。またアメリカ型のウェアストア(倉庫のような販売様式)は、日本では受けなかった。結果、ダイエーは返済不能な有利子負債(98年で約2兆6000億円)を抱えてしまい、金融支援の申請となった。カリスマ経営に対する「チェック&バランス」がきちんと機能していなかったため、このような失敗を招いてしまったのである。

 その後、多くの企業においてガバナンス機能が見直されるようになった。大きく分けて、ガバナンスシステムには二つの種類がある。

 ひとつが、「監査役会設置会社」。日本の企業の95%以上がこれに当たる。年に一度株主総会を開き、その中で取締役会と監査役会を決める。取締役会の中から、さらに代表取締役を決める。いわゆる、三権分立型である。このシステムの問題点としては、取締役会が社長の部下的な立ち位置となるため、部下が社長をチェックできるのか、という疑問が上がる。

 もうひとつが、「委員会設置会社」。こちらは英米型ガバナンスである。取締役は監査機能に特化し、社外取締役(最低2人)の存在が法律で義務付けられている。代表執行役は単独で執行が可能であり、代表取締役よりも強い権限を持つ。よほど自信のある社長でないと委員会設置会社になることはできず、現在では超巨大企業やグローバルなコングロマリットが、このシステムを採用している。

 (次回に続く)

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷晃毅