第84回:企業の社会的責任(その3)

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 前回に引き続き、「コーポレート・ガバナンス」について。

 日本の企業統治は、世界全体の中でも評価がかなり低い。あるランキングによると、欧米など先進国を含めた38カ国中、36位という結果が出ている。その理由としては、委員会設置会社が少ないことが挙げられる。なお、ダウ30社の平均では、取締役10人中、2人(CEO:代表取締役、CFO:財務取締役)以外は、社外取締役となっており、外国人や女性の取締役も多い。

 しかし日本においても、企業統治における優良企業は存在する。たとえば、東芝。委員会設置会社であり、海外を意識したビジネスを行うため、海外型の企業統治を採用している、社外取締役を4人設置し、国際関係・学識・法律など、多様な視点によるリスク回避を図っている。その結果、2006年のウエスチングハウス(原子力発電)の買収、2007年にはDVD-HD事業からの撤退という「潔い決断」にも成功した。

 コニカミノルタも東芝同様、委員会設置会社だ。社外取締役を4人設置、しかも4人全員がメーカー出身だ。ものづくりをやっている会社のトップ経験者を採用することで、より実用的かつ安定したガバナンスを行っている。その上、取締役12人の人数比を、コニカ出身4人、ミノルタ出身4人、社外4人というように、うまくバランスを取って構成している。

 また監査役会設置会社でも、優良な統治を行っている企業がある。その代表例が、オムロン。取締役会自体が7人と少なく、うち2人が社外取締役である。しかし社長が社内を怖がるくらい、シビアな企業統治を行っており、家族的な意識を持ちつつも、ベンチャー意識をつくることに成功している。2003年には創業家外から初の社長が就任し、買収や子会社化にも力を入れ始めた。いまや中華圏での事業拡大にも注力している。

 「いまの業績が良くても、先のことはわからない」そんな不安定な世の中だからこそ、企業統治は投資家たちにとって一種のリスクヘッジとしても重視されている。日本の各企業にとっても、グローバル市場で生き残っていくためには無視できない要素である。

                     慶應義塾大学SFC 環境情報学部 水谷晃毅