第85回:企業の社会的責任(その4)

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 今回は、「CSR(Corporate Social Responsibility)」について。

 地球・人類の危機は、待ったなしの状況となっている。世界人口は1950年~2050年までの100年間で約4倍になると言われており、そのような人口増加や経済発展に伴って、環境破壊や資源の枯渇、貧困拡大などの代償は大きくなるばかりだ。生活水準の格差も広がっており、もし世界の人々が日本人のような暮らしをしたならば地球は2.4個必要であり、米国人のような暮らしをした場合は5.3個必要という調査結果も出ている。しかし、現実問題として地球は一つしかない。限りある資源をいかに使い、共存していくか。現代社会では、「持続可能な発展」を目指すことが求められているのである。

 そんな中、企業は国家以上の影響力を持つ存在になりつつある。実際、世界の主要企業の中には、売上高が国家のGDPを上回っているものもある。先に述べたような世界規模の課題の解決において、企業が果たす役割は非常に大きくなったのである。

 そこで注目されているのが、企業の「CSR」である。欧州委員会ホワイトペーパーによると、CSRとは「責任ある行動が持続可能なビジネスの成功につながるという認識を持ち、社会や環境に関する問題意識をその事業活動やステークホルダーとの関係の中に、自主的に取り入れていくための概念である」とされている。つまり、短期的な利益の追求だけでなく、消費者や株主など、社会との信頼関係をどう築くかということである。

 CSRの実践例として、授業内では2つの企業が取り上げられた。ひとつは、株式会社リコーの「超長期環境ビジョン」。2050年の環境負荷を、2005年の8分の1に低減することを前提に、2010年までに環境負荷を2000年比で10%削減する、というもの。事業活動全体を「環境負荷」という視点で捉えている。もうひとつが、三菱電機の「環境ビジョン2021」。製品のエネルギー効率化と省エネ設備投資などにより、2021年までに製品生産時と使用時のCO2排出量を30%削減する、という。

 このような活動は、「企業の責任と役割」であるだけでなく、「企業の進化」にも繋がってくる。これまで以上に、経済・社会の変化に合わせた経営の再構築が求められる。

                       慶應義塾大学SFC 環境情報学部 水谷 晃毅