第99回:地球環境技術論(その5)

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 今回は、「交通機関」について。

 一般的に、温暖化の原因となるモノとしてまず思い浮かぶのは「自動車」だ。実際、日本の温暖化に占める自動車の寄与率は約20%であり、世界的にもこの割合は日々増え続けている。(アメリカでは33%に上る。)特に、発展途上国での大量普及が始まると、莫大な量の二酸化炭素が排出されると懸念されている。インドや中国での自動車の需要が高まる今、この懸念はもはや現実となっている。

 現在、自動車は大きく二つの種類に分類される。「内燃機関自動車」と「電気自動車」だ。特に最近注目されているのが後者の「電気自動車」だが、細かく分けると、電力の供給方法によって名前が異なる。電池のみから共有するものは「電気自動車」、燃料電池でアシストするものは「燃料電池自動車」、内燃機関発電機でアシストするものを「シリーズ方式ハイブリッド車」と呼ぶ。

 SFCでも、本講義を担当する清水浩教授のもと、「Eliica」と呼ばれる電気自動車の開発が行われている。 http://www.eliica.com/ 電気自動車はこれまで、性能が低く実用的ではないとされてきた。自動車の価値は、「加速感」「乗り心地」「広さ」の3つによって評価される。Eliicaは最高時速400kmを目指して開発され、現在は370kmとなっている。

 電気自動車の開発には、設計に始まり、高性能な要素技術の採用、新しい車体機能技術の創造など、さまざまなハードルがある。Eliicaは民間会社38社の協賛で開発された。まさに、SFC最大の強みである「産学連携」である。

 このように、二酸化炭素を排出している現在の自動車から電気自動車へと切り替える為の、技術的基盤はできている。あとは、いかにして試作段階から商品に、さらに大量生産へ発展させていくか。多くの自動車メーカーが取り組んでおり、近いうちにポピュラーなものになるだろう。

慶應義塾大学 環境情報学部 水谷 晃毅