大事故を防ぐ一つの方法論

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 幸い大事にならずに済んだが、数週間前にバイクで事故った時の傷が中々治らない。久しぶりに怪我をすると恐らく加齢による自然治癒力の低下を自覚することになるが、それでも剥がれた爪が生えてこないとぼやいていた、同い年の弊社代表取締役よりはきっといくらかマシである。

 何年か前にも書いたが、異なる事情を抱えた人たちがあらゆる非言語コミュニケーションの手段を駆使して自分の意図を全体になじませる「道路」という場所は、異文化コミュニケーションの最たる実践場所である(「路上の異文化コミュニケーション」)。しかも、一歩間違うと人の命に関わるから、細心の注意を払って、全体の秩序を保ちながら自己主張をする必要がある。

 運転中は、素の自分が出ると言われる。特に車の場合、物理的に外の世界から隔離されていることもあるが、それ以上に、見ず知らずの恐らく二度と会わない人たちしかいない「その場限り感」が、普段はまとっている理性の衣を脱がせるのだろう。その意味で、道路は匿名で書き込むネットの世界と似ている。そもそもこうした「その場限りの場所」では少し油断するとコミュニケーションが雑になりがちだが、さらに、余裕がなかったりすると、その雑さに拍車がかかる。寝不足だったり、疲れたり、悩み事があったり、イライラしていたりすると、どうしても自己中心的になり、事故の確率を高めるのだ。

 日常の人間関係でも同じことが言える。普段のその人からは信じられないちょっとした言動が、顰蹙を買い、時には周り傷つける。それまでせっかくその人の人格で築いた人間関係が、恐らく意図せず出てしまった「その場限り感」によって一瞬にして壊れてしまうのを見るにつけ、もったいないなぁと思う。自分を振り返ってみても、修復不能とまでは行かなくとも丁寧なコミュニケーションが出来なくなったことによる、「事故」のようなトラブルはたくさんある。どんなに慣れ親しんだ人たちでも、相手は他人。感謝と思いやりのない雑なやり取りは、大事故につながる。

 前の会社を辞める時、「経営者が一番注意を払うべきは自分が元気でいることだ」と敬愛する上司からアドバイスをもらった。その頃は、こんなロジックの王様のような人でもアントニオ猪木みたいなことを言うもんだな、位にしか思わなかったけれど、今はその意味がとてもよく分かる。「元気があれば何でもできる」わけではないかもしれないけれど、「元気じゃないと、色々困る」のは確かである。

ちゃんと睡眠と休息を取る。これもきっと大事故を防ぐ一つの重要な方法だ。


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人の成長を支援する「洋々」GM。経営コンサルティング会社A. T. Kearneyにて、Managerとして金融機関を中心に数多くのコンサルティングを手掛ける。また、採用担当者として多くの面接を行うと共に、コンサルタント向け研修プログラムの作成、実施にも深く関わる。金融専門誌への執筆多数。慶應義塾大学経済学部卒。ミシガン大学ビジネススクール・MBA Essential program修了。