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洋々LABO > 入試ニュース > 倍率推移 > 【2021年度入試改革】これからの入試戦略は、「興味×適性」の見極めを

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2021年度入試改革は、大学入学共通テストの度重なる仕様変更がなされるなど、いまだ先行きの不透明な状態が続いています。

入試改革元年からこの先、入試はどのように変わっていくのか。そして受験生は、変わりゆく入試にどう立ち向かえば良いのか。新たな入試のWhyとHowについて、AO入試の最前線で10年以上サポートにあたる洋々代表の清水にインタビューを行いました。


清水 信朗(洋々代表・GM)
洋々代表。日本アイ・ビー・エム株式会社にて、海外のエンジニアに対する技術支援を行う。その後、eラーニングを中心とした教材開発に、コンテンツ・システムの両面から携わる。 東京大学工学部電子情報工学科卒。ロンドンビジネススクール経営学修士(MBA)。

なぜ、入試改革なのか?―試験の変化と背景

――そもそも、2021年度大学入試改革はどのような経緯で行われることになったのでしょうか?

今回の入試改革は、変化する時代への対応という意味合いに加え、既存の一般入試とAO・推薦入試への批判に対する文部科学省のアンサーとして打ち出されたのではないかと考えています。

これまで、一般入試は「学力を測るための試験」、AO・推薦入試は「受験生の大学に対する熱意と適性を測るための試験」という認識が一般的でした。それぞれの試験に対しては、「一般入試は知識偏重で、受験生の学びへの姿勢やポテンシャルを評価できていない」「AO・推薦入試は、学力が十分でない学生を入学させている」という批判が度々なされてきました。

こうした声を受けて、「一般入試でも学力以外の能力や姿勢と、既存の試験で測りきれていなかった力を測ろう」「AO・推薦入試でも学力を重視しよう」という考えが生まれ、今回の入試改革につながったように思います。

――実際の試験は、そうした批判に対応するような形式や内容に変化したのでしょうか?

そうですね。これまで、一般入試は学科試験で学力のみを測るケースが大多数であるのに対し、AO・推薦入試は、書類選考や面接、プレゼンテーションなどを課し、総合的に受験生を評価するという全く異なる入試でしたが、一般入試とAO・推薦入試が同じ方向を目指して収束していくような流れが散見されます

――具体例として、どのような変化が挙げられますか?

たとえば、早稲田大学は2021年度から指定校推薦入試(※)で合格した受験生に対して、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の受験を義務化し、推薦入学者に対して一定の学力や知的水準を求めることを発表しました。

※指定校推薦入試:大学が指定した高校に対して1~3名程度の推薦枠を与える入試制度

また、早慶を初めとする多くの私立大学では、一般入試の出願時に「主体性」「多様性」「協働性」についてどのように考え、心掛けてきたか」について、記述回答を受験生に求めるようになります。この回答は現時点では評価の対象外のところがほとんどとですが、数年後には合否判定の材料になることも十分考えられます。

「広く浅く」より「狭く深い」対策を

――これまでの入試対策は、大学を絞ったうえで各大学の傾向に合わせて対策を練る形が一般的でした。入試改革以降の対策では、どのような戦略が必要になるでしょうか?

一般入試とAO・推薦入試の両方を視野に入れた対策を行うと、限られた時間を最大限有効に使うことができるはずです。

今後、それぞれの大学の一般入試、特に私大の一般入試は、学科試験の簡略化が進む一方で、各学部学科の領域に深く関わる内容や、その領域への関心を問う内容の試験を課すように変化していくのではないかと予想しています。

具体例を挙げると、早稲田大学政治経済学部の一般入試で学部独自の学科試験を廃止し300字程度の記述を含む試験を新たに設定したり、上智大学の一般入試で通常の科目とは異なる記述式の試験を課すようにしたりするのは、その傾向の表れだと思います。もちろんAO・推薦入試に関しても、これまで通り受験生の関心や適性を測りつつ、一定の知的水準も求められるようになるのではないかと思います。

そのため、たとえば、これまではAO・推薦入試の小論文試験で問われていたような内容が、一般入試に論述試験として出題されるようなケースも増えていくかもしれません。両方の入試を見据えた対策をすることで、受験のチャンスを増やせるだけでなく、より志望校・志望学部にフィットした対策が可能になると思います。

――そうした戦略をとるために、本格的な受験期に入る前にできる準備はありますか?

自分が大学でどのようなことを学びたいか、何を追究したいかを考えるための材料を積極的に集め、それらについて考えておくことが大切です。そうすることで、自分に適した学部が絞れるようになるため、早くから対策を立てやすくなります。

初めから「何をしたいか」を考えると幅が広すぎて選びづらいので、まずは文系・理系という分類から一歩進んで、その中でもどのような系統に興味があるかを考えてみると良いでしょう。文系であれば、人文科学系か、社会科学系か。理系であれば、理学系、工学系、農学系、あるいは、医学薬学系か。その分類からより具体的な内容に踏み込むことで、自身の興味関心が見えてくるはずです。

――大学で学ぶうえだけでなく、入試を乗り越えるうえでも、学部選びが重要になるのですね。

そうですね。大学が異なっても、特定の学部において求められる能力や学びへの姿勢が大きく変わることはあまりありません。そのため、一般入試が学部への適性を測る方向に変わるとなると、同学部であれば異なる大学でも同じ対策で対応できる可能性が高くなるはずです。

一方で、異なる学部を併願する受験スタイルは難しくなるかもしれません。特に文系学部において、法学部と文学部の併願や、商学部と人間科学部の併願などは、これまでの一般的な受験スタイルでした。しかし、学部への適性を問われる入試では、その分野への関心度合いが問われるため、あまり多くの領域をカバーしようとしすぎると、それぞれの対策が手薄になってしまう可能性があります。

受験を「学問」への準備にする

――大学入試全体を俯瞰して、改革元年以降の入試はどのように変化していくと考えますか?

受験生の総合的な資質や学問への適性を評価するために、入試の効率化も進むのではないかと考えています。

これまでの入試は、各大学の各学部が各自で学科試験を作成していました。しかし、その大学で求められる学力のレベルが学部ごとで大きく変わらない場合、このやり方は非常に非効率的です。実際、大学側もこの点に長く問題意識を感じてきたと思います。

そのため、先ほどの早稲田政治経済学部や上智大学の例のように、学力の判定は共通テストを利用して効率化し、それぞれの学部や学科はより適性を正確に測る試験作りに力を入れる流れが主流になっていくのではないかと予想しています。英語の外部試験利用も、そうした理由から今後導入する大学が増えていくのではないでしょうか。

――英語外部試験の導入の是非に始まり、依然として入試改革の現状は揺れています。受験生にとって望ましい入試のあり方は、どのようなものと考えますか?

受験生を総合的かつ多面的に評価し、大学や学問領域への適性を重視する流れへと変わりつつあるのは良いことだと思います。だからこそ、試験の形式をより柔軟にすれば、受験生も自身の適性を見極めやすくなるのではないかと考えています。

たとえば、一年間いつでも好きなタイミングで複数回の受験が可能になれば、仮に最初に望んだ進路が叶わなかったとしても、方向転換をしやすくなるはずです。受験が自身の内面や適性をより深く知るための機会となれば、受験生にとって「勉強を頑張って大学に受かる」以上の大きな意義が生まれると思います。

――今後入試に臨む高校生に、受験や進路選択に対する心構えをお話しください。

「自分は大学に行って何をしたいのか」を常に考え、その未来に向けての準備として日々の勉強に励むと良いと思います。入試を意識しすぎるのではなく、これからの学びの基礎を作っているという気持ちで受験に臨めば、必要な学びが自ずと見えてくるはずです。

また昨今、各学問が「実社会で役に立つこと」を重視される風潮があります。大学入学共通テストの試行問題においても、そのような流れを汲んだ内容が出題された科目もありました。

しかし少なくとも高校生のうちは、そうした視点で進路や学ぶ事柄を決めるべきではないというのが私の考えです。すぐに役に立たない学問も、積み重ねることで後々大きな力となります。せっかく10代から20代にかけての貴重な4年間を使うのですから、時流の要求に左右されず、自分にとって本当に興味深いと感じられることを追究してほしいと思います。

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