「代走 鈴木」

巨人の鈴木尚広選手が今年度を最後にプロ野球を引退した。自分は小学校から中学校まで野球をやっていて、その間テレビでよく鈴木選手の代走としての活躍を目にしていたので少し寂しい。そういえば6、7年くらい前に巨人戦を見に行った時、鈴木選手が代走で出場し盗塁を決めていた姿を見て、そのとてつもないスタートの早さと塁間を駆け抜けるスピードに驚いたのを鮮明に覚えている。

鈴木選手のドキュメンタリーでも紹介されているけど、その「代走の切り札」という役割に対する姿勢が本当にかっこいい。デイゲームだと早朝から誰よりも早く球場入り、入念なコンディション調整をし、試合の間は相手投手の癖を観察しながらいつでも声が掛かってもいいようにウォームアップ。スタートを切るときの姿勢や地面からの反発の受け方、塁間走のタイムをコンマ数秒縮めるためのスライディングの工夫(跳ぶスライディング)。何から何までこだわり抜いた努力の結果があの日球場で見た走塁なのだなと思うと、今更もう一度見たかったと後悔してしまう。

盗塁を決めるという個人的な記録には一喜一憂せず、代走としての役割や目的(チームの勝利につなげる、ホームに帰ってくる)を最優先に据えて、日頃の準備を怠らない。そんな姿勢を何十年も貫いた鈴木選手は、やっぱりかっこいいし、あの時も今も変わらず僕のヒーローだ。