油そば
早稲田大学の周辺には、昼時行列の絶えない油そば屋が沢山ある。その中でもその頂点を極めた、油学会は超別格でその内装や従業員、BGMの雰囲気全体が他店とは全く異なる。特にBGMはルパン三世のアレンジが無限ループでかかっているが、これはかなり脳みそを犯しに来ていると思う。延々と同じリズムや店舗で流れるハイテンポな曲と、人々が麺をすする音だけが聞こえてくるあの空間は、言葉にならない高揚感が体内・脳内を突き抜けて、1週間空くだけで禁断症状が訪れる。おまけに店舗自体が外界に発しているあの油そばの香りに誘われて、早稲田界隈の禁断症状持ちの油中毒者達はコロッと入店してしまうのだ。あの場所であの油そばを食べたいという気持ちにこれほどさせられることなんて初入店時には想像だにしなかった。最近は油そばの作り方も少し研究しているが、油学会で食べるあの味はいつも謎めいているし、仮にレシピを真似できたとしても、あの体験そのものを自宅で再現することはかなり難しいだろう。そもそも何が入っているかなんて、探ること自体が大きなタブーなのではないか。知られようものなら油信者に本当に粛清されるのではないか。という、目に見えないがひしひしと感じられる高圧的なオーラで、我々は今日もひれ伏す。