「エコポイント」の経済学
麻生政権の2009年度補正予算案の一つ、エコポイント制度が導入されて1カ月余りが過ぎた。5月15日にスタートして以来、車の販売店や電気屋さんがにわかに活気づいたかのように見える。このエコポイント制度とは、簡単に言うと、エネルギー効率の良い車や家電を買った人に補助金を与えるというものである。
しかし、素人目に見ても、このエコポイント制度、本来の趣旨とあっているの?という点が少なくない。電気効率のいいクーラーを買った人が、扇風機を買った人よりエコか。燃費のいい車を買った人が補助金を貰えて、車を買わずに公共交通機関を利用している人には何もないことに矛盾はないか。本当に「エコ」の推進を目的としているなら、別の方法があったかもしれない。
一方、当然のことながら、このエコポイント制度には折からの不況に対する景気刺激策の意味合いも多分に含まれている。しかし、景気刺激のためであるなら、一律で減税を施したり、もしくは目的を絞らずに消費金額に応じた還付金を出す等、別の方法の方が良かったかもしれない。
けれど、理屈どおりにならないのが人間の世界でもある。いつまでもフラれた人への思いを断ち切れない。やってしまった失敗をいつまでもくよくよ悩む。一時の激情に任せて過ちを犯す。経済も人間の営みである以上、一見合理的でない動きをすることも自然である。
景気とは、経済活動全般の動向を指す言葉として使われるが、元々は世の中の雰囲気に見て取れる景色、と言う意味の言葉だった。要は「世の中の人の気分はどうか?」ということである。その意味で、「みんなが浮かれて、お金使ってもいいか、という気持ちになる」という状態を作れるのであれば、今回のエコポイントも意味のある政策だったと言えるのかもしれない。本来ならば、他の代替手段と比較して、もっとも効果のある施策がとられるべきではあるが、人の気持ちが何に反応するか、ということは実際のところ中々読み切れないのも事実。成果の検証には一定の時間を置く必要があるだろう。
ブームに乗ること自体は悪いことではない。人がやっていることに一々ケチをつけるだけつけて、自分も周りも何も変わらないのは、建設的ではない。ブームに乗ることは、自分の考えを確かめる一つのきっかけにもなりうる。けれど、ブームに徒に惑わされるのではなく、ブームを利用しながら、自分なりのポリシーを固め、生活のスタイルを考える。これこそ、今、私たちがしなければならないことだろう。
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人の成長を支援する「洋々」GM。経営コンサルティング会社A. T. Kearneyにて、Managerとして金融機関を中心に数多くのコンサルティングを手掛ける。また、採用担当者として多くの面接を行うと共に、コンサルタント向け研修プログラムの作成、実施にも深く関わる。金融専門誌への執筆多数。慶應義塾大学経済学部卒。ミシガン大学ビジネススクール・MBA Essential program修了。